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アメリカ皇帝
第一章
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               アメリカ皇帝
 サンフランシスコにあるブレティン誌に突如ある男がやって来た、彼は編集部に案内してくれと申し出た。
「何だ、取材か?」
「徳ダネのタレコミか?」
 記者達はまずはこう思った。
「そんな話は聞いていないけれどな」
「一体何だ?」
「何か変な男だな」
「穏やかそうだが」
「何だあれは軍服か?」
 その人物の出で立ちを見た、口の周りを濃い髭で覆っており軍服を思わせる服を着ている。態度は随分と鷹揚でものものしかった。
 記者達は彼等を取材ではなければトクダネを持って来たかそうでなければ悪戯だと思っていた、だが男は記者達の予想を超えていた。
 彼はある手紙を差し出すと共にこう言った。
「余は皇帝である」
「皇帝?オーストリアのか?」
「いや、フランスか?」
「ロシアか?」
「どの国の皇帝も今合衆国には来ていない筈だぞ」
「ハワイ王は皇帝じゃない」
「では誰だ?」
 まさにとだ、記者達はいぶかしんだ。だが彼はその記者達にさらに言った。
「アメリカ皇帝である、今からこの国は余が治める絶対君主制の国となるのだ」
「えっ、何だって!?」
 男のその言葉にだ、記者達は呆気に取られた。一瞬何を言われたのかわからなかった。
 それでだ、男に思わず聞き返した。
「あんた今何て言ったんだ?」
「アメリカ皇帝だって?」
「しかも絶対君主制だと?」
「何を言ってるんだ、アメリカは合衆国だぞ」
「大統領を選挙で選ぶ共和制の国だぞ」
「それで皇帝だと」
「冗談で言っているのか?」
 彼等は男に口々に聞いた、誰もが男の言葉を正気とは思えなかった。 
 だが男は胸を張って堂々と言い切った。
「冗談ではない、余はこれよりアメリカ皇帝となったのだ」
「何を言っているんだ」
「本当におかしいのか」
「これはアメリカ議会に聞くか」
「馬鹿言え、こんなこと議会が取り合うか」
「そもそものおっさんは正気なのか」
 記者達はタイプライターとアルファベットの城の中で口々に言い合った、だが男はこの社だけでなくサンフランシスコのマスコミ各社にアメリカ皇帝となったことを宣言した。そしてだった。
 礼装、アメリカ皇帝のそれを着て投書を行った。
「またか」
「またあの人からの投書か」
「今日も勅令と言ってるぞ」
「皇帝そのものの文章にもなってるな」
 社会についての批判と改善点を書いていた、それは彼なりに真剣に社会を見て解決案を出しているものだった。
 だがその皇帝の勅令をだった。マスコミの者達はというと。
「貴重な意見として受け取っておこう」
「紙面に載せてもいいな」
「投書としてはいい」
「勅令は知らないが」 
 こうした対応だった、そしてワシントンのアメリカ議会にもその話
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