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徒然草
164部分:百六十四.世の人相

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百六十四.世の人相

                   百六十四.世の人相
 町中にいる人達というものですが他の人と会えばそれだけで少しの間も黙っていることができないもののようです。会えばそれでもう絶対に何かを話します。聞き耳を立てるとその多くはただの与太話であります。浮ついた話や他の人への悪口、そうした与太話は他の人を陥れて自分の品格を下げるだけで何の足しにもならないものであります。
 そしてそうした与太話は自分自身の心にもよくない影響を与えるということであるのに気がついていませんから尚更たちが悪いのです。自分では気付きにくいものであります。その結果としまして知らないうちに自分自身が貶められていっていきます。そうしたことがわからないから言うのでしょうがその結果がよくないものであるというのも気付かないのです。気付いていれば最初から言いません。気付いていないからこそなのです。それがわかっていると心は穏やかになり落ち着いて考えるようにもなれます。そこを踏まえてそうした下らない話なぞしないでいきたいものです。口をつぐんでそのうえで己を保つのもまた大事なのです。ですが市井でそうしたことができている人というのもあまりいないものです。何事も細かい心掛けを保っていたいものであります。


世の人相   完


               2009・10・25

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