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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月8
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瓦礫の円から周回軌道を逸れ、瓦礫が別の円を描き始める。先ほどと同じく瓦礫で攻撃を仕掛けてくるつもりだ。しかも今度は引力と遠心力の同時攻撃である。もはやこの状況に至っては、躱す術がない。引力を利用した氷の攻撃も、今では瓦礫の円に呑まれて終わり。
 状況はまさに、どん詰まりだった。
 状況を打開する術が思いつかないまま、思考だけが何か生き残る術を探そうと記憶をかき乱し、走馬燈がエデンの頭を駆け巡った。その時、一つの言葉が引っ掛かった。

『……ま、どん詰まった時にこの言葉を思い出せ』

 誰の言葉だったか。何を思い出せばよいのか。
 考え、考えに考え、あ、と間抜けな声がでた。

「大人に頼れ……リック先生が、どうにもできなきゃ大人に頼れって……」

 その言葉を即座に否定したのは、美音だった。

「大人なんかに頼って何になるって言うのッ!!」
「えっ――」

 それは、入学から一か月以上を過ごして初めて聞く、底抜けに暢気だと思っていた友人の憤怒の籠った言葉だった。余りにも突然の豹変に続く言葉が出ない。

「いい子いい子で育てられたエデンには分からないでしょッ!!大人って言うのはさあ!」
「美音、駄目よ!」
「大人なんていつだって嘘ばっかりで、子供の分かってほしいことになんか一つも興味ないのよ!!」 

 美杏がその時どうして静止したのか、その理由は分からない。
 しかし、遮られかけたその言葉には、生々しいまでの実感が籠っていた。
 普段はおちゃらけている彼女の心の内より噴き出てきた、強烈な怒り。彼女の感情に呼応するように噴射が強まるが、無理な噴射でバランスが段々と崩れ始める。それを自制できない程に歪んだ感情からは、怒りに混ざって上手く見えない感情が入り乱れている。美杏が必死で宥めようとするが、濁流のように飛び出した感情を抑える事が出来ていない。

「落ち着いて美音!」
「煩いッ!!リック先生だって大人なんだよ!!自分が一番かわいくて口だけ生徒を心配するだけの、なんにも分かってくれない大人だ!!」
「やめなさい美音!!心を乱しては駄目!お姉ちゃんの声を聴いて!!」
「大人が来ないから美音たちはこんなことをしてるのよ!?大人たちなんて、事が終わってからのこのこやってきて『すまなかった』とか心にもない事言って終わらせようとするだけに決まってる!!」
「美音ちゃん……」

 彼女の怒りは誰に向けられているものでもない。恐らくは先生にすら向かっていない。巨大で不鮮明で漠然とした、大人と呼ばれる階級に対して向けられていた。今まで彼女は、内心でずっと先生たちを……大人たちをそう思っていたなんて、想像すらしていなかった。

「大人に頼れ!?今こそ頼りたいときだって時に近くにいない人をどうやって頼れって言うの!?
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