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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月8
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みたい」

 この絶望的な状況で、やっと事態が好転した。

 そう思ったのも、つかの間だった。

「イイね……ヤってくれるね……お姉さん、アドレナリンが爆発してきたよぉぉぉぉッ!!!」

 水蒸気爆発で舞い上がった噴煙を吹き飛ばし現れるのは、これまでよりも更に深く、もはや深すぎて狂気すら感じる壮絶な笑みを浮かべたナンダの姿。
 その周囲には瓦礫が輪を描いて周り、爆発の衝撃で裂傷や出血の赤が全身を戦模様のように染め上げている。

「術で構成した物質を更に術で利用する!!そうだよ、そうこなくっちゃ!!ずっと未熟者だと思って遠慮してきたんだけど、もうここまでやれるなら『イイ』よな!?一人前の、命懸ける覚悟ある戦士ってことで『イイ』よな!?」

 周辺の白い氷が剥げる。遠くにあった瓦礫がべきべきと音を立ててナンダの周囲に吸い寄せられる。倒壊したビルのもう一つが、砕かれたビルまでもが、ふわりと不気味に浮き上がって見下ろすように上空から影を落とす。これまで小さな瓦礫を中心に飛ばしていたが、もはや重さや大きさの制限を取っ払ったように物体が引き寄せられてゆく。

「……うそ」
「ば、化け物……!」

 そこに居たのは先ほどのナンダとは決定的に違う。

 固定されていない、ありとあらゆる物質が彼女の周囲に集い、軌道を回る。

 あらゆる物質を従えた、質量の支配者のような威容だった。

「星が回すのはデブリや氷、空気だけじゃねぇ!!衛星だって回すし、土星も円盤回してんだろぉ!?カッシーニの間隙って奴だ!!これまでは『ナンダという星』だったけど、本気を出すときは『星になったナンダ』で行くのが流儀なんだァ!!」
「やりなさいナンダ。手足の1,2本は潰してくれないと割に合わないわ」
「ハッハッハァ!!イエース、ユアハイネスッ!!」
 
 ナンダが手招きする。瞬間、全身がグン、とあちらに引っ張られた。引力で引き寄せられているのだ。今までと決定的に違うのは、今回は武器となる氷や瓦礫がナンダとルーデリアの周囲で高速回転を始めていることだ。あれ自体が武器となる。

「まずい、このまま引き寄せられたら瓦礫の雨に放り込まれる!!」
「嘘……エイジ逃げて!!こうなったら私を置いて……って言っても聞かないだろうけどさ!!」
「うん。駄目」

 エイジがすぐさま氷をナンダ方向に展開し、二人の体を遠くに押し上げようとする。だが、引力が強すぎて離れない。古芥子姉妹も炎の逆噴射で引力を脱しようとするが、引力を振り切れない。

「おい?おい!オイオイオイオイこの期に及んで逃げるってのはナイんじゃないか!?拒絶から人間関係は進展しないぜ!?そんな恥ずかしがりやさん達なら、こっちもちょっかい出しちゃおっかな〜〜ッ!!」

 周辺を回転する
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