暁 〜小説投稿サイト〜
【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月8
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
来るぞ!!」
「えっ――」

 ルーデリアが毅然と前に出ようとした瞬間、背後から二人の少女の声と共に光が降り注ぐ。

「ジェミニ☆プリティ?シスターズを!!」
「エキストラ扱いは酷いんじゃない!?」

 間髪入れず、三つの超高熱の熱線が降り注いだ。

「美杏ちゃん、美音ちゃん!」
「二人ともそのまま後退〜〜っ!!」
「今度は不意打ちかい?そう簡単に通すと――おいおい、『そっち』狙いかッ!?」

 エイジとエデンの撤退時間を稼ぐ援護射撃。すぐさまこれまで通りに受け流そうとするナンダだったが、すぐさまルーデリアを抱えて伏せる。
 三つの熱線はナンダを狙ったものでもルーデリアを狙ったものでもない。その三発は、二人の周辺に山と積まれた氷の塊を最も効率よく融かすものだった。それも以前に訓練で展開した氷の比ではないほど大きな氷の塊を、一気に超高熱で融かすのだ。

 エイジの展開している氷の多くは純粋に大気中の水分ではなく、水に極めてよく似た性質の物質をA.B.によって一時実体化させているに過ぎない。そのためエイジの氷を食べてもそのうち腹からは消える。
 しかし、消えるまでの暫くの間は、それは水分として機能する。
 超高熱が氷を瞬時に蒸発させた場合――その水分は水蒸気として、爆発的に膨張する。

 エイジが壁を展開して逃げるのとほぼ同時。

 ナンダとルーデリアの周辺を、バァァァァァァンッ!!と強烈な衝撃と破裂音が揺るがした。

「ふっ……水蒸気爆発って知ってるか?」
「どやっ!火力は逸らせても衝撃波は逸らせないんじゃない!?」
「いっつー……み、耳がキンキンする……」
「爆発、近すぎ」

 無駄にキザな態度で格好つける美杏に、したり顔で歯を見せて笑う美音だが、援護ついでに若干余波を受けたエデンとエイジは二人にジトっとした視線をぶつけた。確かに万全ではないエイジではこれ以上あちらの攻撃を上手く躱せなかったので、援護はありがたい。
 ありがたいのだが、もう少しこちらにも気を遣ってほしかった。特にエイジはエデンを若干巻き込んでいることにご立腹なのか、珍しく不機嫌が顔に出ている。喧嘩をしている暇はないのでエイジの手を握り、「後にしよ?」と言うと不機嫌は引っ込んだ。素直すぎる。素直クールというものか。

 と、突然エデンのポケットの中のスマートフォンが振動した。エイジのも、古芥子姉妹のもだ。更に近くのまだ生き残っていた外部無線が大音量を吐き出す。

『緊急警報発令!緊急警報発令!複数の製鉄師が侵入しています!!戦闘員はナビゲーションに従って侵入者の迎撃に当たってください!非戦闘員は速やかに地下通路を利用してシェルターに避難してください!!繰り返します――』
「これは、永海ちゃんの通報が間に合ったの!?」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ