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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月8
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が鋭角となっていた。白いせいで中にいる二人がどうなっているか分からないが、相手が製鉄師と魔女ならば死んではいないだろう。製鉄師と魔女は、魔鉄の加護によって死ににくい。無事ではなくとも鉄脈医療で命は助かる筈だ。いや、今はそう楽観的に思っていたい。

「これだけの攻撃ならば、手を振り回して大気を乱す程度では防ぐことは出来ない」
「うん……」
「でも、この攻撃は一つだけ、考慮していないものがある」

 それは、と問う前に、正面から氷の弾け飛ぶ音が響いた。

「……正直、想像以上だったぞ?星の煌めきってのは素晴らしいが、見惚れ過ぎてしまうのが良くないのかもな」
「……嘘、でしょ」
「――相手が別の有詠唱術を展開した場合、戦闘不能に追い込めていない可能性は……あった」

 氷と雪の壁を崩し、黒肌と魔鉄のナックルが再び白日の下に姿を現した。
 あれだけの攻撃を受けておきながら、ナンダは変わらぬ笑みを浮かべて舞い戻る。

 いや、笑みこそ崩れないが、決して無事ではなかったようだ。肌は凍傷で腫れあがり、急激な温度変化で肌のあちこちが裂けて痛々しい断面を晒している、体にも氷が張り付いたままであり、眼も片方が開いていない。
 それでも、彼女はそれをダメージと感じさせない程にしっかりした足取りで、出てきた。
 後ろには無傷のルーデリアの姿もある。そのルーデリアとナンダ自身の周囲を覆うように、微かな丸い歪みが見えた。
 障壁ではない。だが恐らく、あれが二人をあの必殺の筈の一撃を受け流させた。エイジはその正体にすぐさま気が付いた。

「空気の層……!」
「そう!地球に空気があるのは引力が空気を呼び寄せてるから。それを応用すれば、大気層のバリアもどきも作れるのさ!とはいえ、お嬢を守るのにリソースの半分以上を回してた上に高速言語(ハイワード)だったせいでこっちはこの有様だけどな?」
「………」

 高速言語詠唱の唯一にして最大の弱点、それは言葉の希薄化による威力の減退だ。日本風に言えば、言霊の力が弱いとされる。
 冗談めかして笑うナンダを後ろから見つめるルーデリアの瞳が一瞬だけ悲しそうに歪んで見えた。恐らく彼女が現場に来ていなければ、ナンダはあの一撃を受け流し防ぐ術があったのだろう。こちらの方がOIの深度が深い筈なのに、その判断力と応用性でナンダはそれを凌いで見せた。

 しかも、高速言語まで使えるということは、これ以上術の打ち合いになれば速度では絶対に勝てない。ダメージを負っているのはあちらなのに、状況を支配しているのは依然としてナンダだった。

「お前らの本気、刺激的だったぜ!倒せなかったのはまー、ちょっとした年季の差だけだ」
「……まぁ、素人にしてはよく頑張ったと褒めておきます。しかし依然立場は――」
「んっ、お嬢!まだ
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