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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月6
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ング系だ!ゴーグルをあてにしすぎるなよ!」
「ペイント弾で色をつけろ!迷彩はそれで潰せる!」

 実のところ、SDFの面々は民間人救出と避難のために行動していた。しかし悟が『パートナーがテロリストと戦いに!あのビルです!』と渾身の演技を見せ、ついでにテロリストが攻撃型製鉄師ではないことをさりげなく伝えていた。
 つまり、彼らは『少女救出のためテロリストを捕らえる』という燃えるシチュエーションで士気を高めていた。ここまですべてが悟の手のひらの内である。

 相手より多く情報を得ることが出来る。そしてそれを伝える術がある。
 たったそれだけで、人は敵より圧倒的に優位に立つことができる。
 もし日本皇国が戦争状態に突入した際、悟が一人いるかいないかで戦況は大きく左右するだろう。彼は『居ながらにして全てを悟る』ことが出来るのだ。皮肉にも彼の両親がつけた名前を体現するかのように。

「つまり、このまま降りたらおれ、囚われのお姫様役かよ……女扱いすげー嫌」
『まぁ、必要経費と思って今回は勘弁しろ』
「つーか、リック先生に連絡取ったのか?」
『知らせる前に自力で気づきやがった。もう移動中だ』
「えぇ……」

 どうやら自分の担任は存外に大人であることに拘りがあるらしい。そんな分かるような分からないような事を考えながら、永海はつぶやく。

「次からも、奥の手は使わない気か?」
『そういう契約だろう。お前はそれを呑み、そして俺も譲歩している』
「分かってるよ。分かってんけど……これで皆は手遅れでしたってなったら……」
『ならないように手伝ってやったろう。あの暴力教師もそのうちつくし、何より――』
「なにより?」
『このクラスで俺の次に優秀な頭脳を持つ男があっちにはいるんだ。死なないよ』

 その言葉は彼にしては珍しく、誰かに期待しているような言葉だった。
 
 数分後、鉄脈術によるジャミングが途切れた。
 
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