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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月5
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 エイジが氷の道で猛攻を躱しながら、その分析結果を口にする。

「引力と遠心力。彼女は、星だ」

「――そゆコト!だからさぁ、双子のお嬢ちゃん方?空を飛んだって引き寄せちまうのさぁ!!」
「うぐっ、コントロールが……きゃああああああ!」
「美音ッ!?まずっ……いやぁぁぁぁぁぁ!!」
「二人とも術を解除して!!」

 空を飛んでいた古芥子が、まるで釣り糸に引きずられるように飛行不能になり急速にナンダに引き寄せられる。エイジは空を氷の足場で走り、それをなんとか受け止めた。しかしそれでも二人は氷の足場に張り付けられたように動けない。引力で惹かれているのだ、とエデンは確信した。

「さあ考えな少年少女!!このナンダを攻略する方法を!!この『寄せ返しの遊星(グラフィタシィ)』への対抗策を!!」

 その後ろ、いつの間にやらパラソルを取り出して双眼鏡で戦いを観戦するルーデリアは嘆息した。

「………この戦闘馬鹿は完全に楽しんでるわね。まぁいいわ。どう足掻くか、そして『どれが真の敵か』見物させてもらいます。それにそろそろ、カンのいい誰かがジャミングの外から異変を感知してもおかしくない」






 同刻、モノレールに乗って校舎本棟に向かっていた二人の教師が、携帯端末を片手に眉をひそめていた。

「生徒手帳のGPSが指し示す座標が全く動いていない( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )よ、リック」
「行ってくる」

 何があったのか、など一言も言わない。システムの故障か、とも一言も言わない。ただ生徒に『何かあったかもしれない』というそれだけで、リック・トラヴィスという男は動く。それは病的な、或いは呪いの域に達した彼のそうあるべきとする信念。

 誰かを守るため。

 それがリックの――契約魔女が変わっても不変の、或いは以前より更に濃密に練り固まったトリガー行動にして、存在意義。

 その背中を見るルーシャは、胸を締め付けられるような感覚を消すことが出来ない。
 彼がこうなってしまった責任の一端は、自らの我儘にあることを知っている。本当にリックの事を思うのなら、教師などという責任を負わない立場で隠居した方が、きっと平穏だったと知っている。でもリックはそれを選ばないだろう。自分も気が済まなかった。

 だから、せめて。

「違うでしょリック」
「………?」
「行ってくるじゃなくて、行くぞ、でしょ」
「――急ぐぞ。落ちないようしっかり捕まれ」

 ほんの一瞬の逡巡があった。それでも意をくみ、手を伸ばした。それはパートナーだからではなく、自分が■だからだと心のどこかでは知っているけれど――せめてこんな時こそ伴侶らしく寄り添っていたいのだ。


 リックはルーシャを抱え、モノレールの非
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