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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月5
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に状況を脳裏で考察し続けていたのだろう。問題は、なんの能力の応用で風や瓦礫を操っているのかだ。

 安直なものとして、エデンはビルを振り回す光景に「重さ」が頭をよぎった。

 リック先生みたいな極端な増強タイプならば自力で振り回せるかもしれないが、力ずくなら現在彼女の足元には陥没するほどの負荷がかかっている筈だ。しかし、彼女が踏みしめる抉られた大地にそんな形跡は見られない。重さをなくせば子供だってビルを振り回せるだろう。

 しかし、重さを操るのであれば風を操っているように見えるのが説明つかない気がする。空気に重さがある事ぐらいならエデンも知っているが、術の詠唱もなく自在に操れる人が鍛鉄(トライン)というのが腑に落ちない気がした。

 では、そもそも重さとはなにか。思いつくのは重力だ。
 つまり相手は重力を操る……とも思ったが、それもなんだか変だ。
 エデンのイメージでは、架空のお話に出てくる重力兵器や重力魔法は、相手を重力で押しつぶすという割かしえげつない方向に使われる。逆に浮かせることも出来るだろうが、そんな力があるのなら手っ取り早く飛び回る自分たちを重力で叩き落とせばいいのではないか。

「やらないの?それとも、出来ないからやっていない?重力を操っている訳じゃない?」
「うん。そして物体を移動させる術でもない。あの術はこれまで、彼女から見て『直線』と『曲線』でしか力を行使していない」
「え?」

 そういっている間にも瓦礫が飛来する。エイジに守られている安心感から精神を落ち着かせたエデンはその瓦礫の軌道を見る。余りにも速度が速くて分かりづらいが、その瓦礫は飛来し通り過ぎるまで確かに曲線を描いていた。もしかしたらこれまでも、正面以外は曲線を描いて襲って来ていたのかもしれない。

「でも、じゃあ背後からの攻撃は?」
「あれも曲線だった。『舞い上がった瓦礫が曲線に変わって襲ってきた』。そして多少の軌道変化はあるけれど、あの瓦礫の曲線の支点、中心はあのナンダって人だ。そしてナンダは……直線以外の術行使の時、やけに『回転』する」

 言われて、思い出す。
 古芥子姉妹の攻撃を背けさせるとき、オーバーなまでに体を回転させて逸らした。有詠唱の際にもそうだ。その後の行動も、エデンが覚えている限りでは必ず手を横方向に向けて振っていた。腕の支点は肩、或いは支える体そのものだろうか。つまり回転でもある。

「きっと腕を振って『軌道』に乗せる必要がある。乗せずに行使すると直線となり、風は副産物なんだ」
「氷や瓦礫を引き寄せていたのは?それも軌道なの?」
「というより、もっと大本の法則があるんだ。それを利用するのに軌道が一番効率がいい。引き付ける力、軌道に乗せる力、弾き出す力……すべてを満たすもの。そして応用が可能なもの」

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