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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月4
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たー!?」
「回るー!?」

 形状はアトラクションなんかで見るウォーターバルーンに近い。上を見るとなんと空を切る氷のカイトまでついている。はぐれないよう咄嗟に展開したらしい。相変わらずエイジは器用な事をする。あのまま吹き飛ばされていたら……潰れたトマトだったのだろうか。想像するだけでぞっとする。
 そんな中でもエイジはエデンと手を繋いだまま、淡々と状況を把握する。

「町の中心地側に飛ばされている。ここから揺れるよ」

 エイジの宣言通りアイスボール内が揺れ、古芥子姉妹が悲鳴を上げる。細い氷を操って衝撃を無理やり吸収しながら下に降りていき、どうにか速度が収まってきたところでボールが割れた。エイジが率先して飛び出し、エデンの膝裏と腰を抱え空中から氷の道を形成、姉妹と共に落下しないようにカバーする。
 家族だから贔屓目に見ていると言われれば否定はできないが、こういう時のエイジの動きは凄くスタイリッシュだと思う。あとはお姫様抱っこをすれば完璧なのだが、それは先生に止められた。曰く、「それやってぎっくり腰になった奴も脱臼した奴も見てきた」だそうだ。

 周囲を見渡すと地面が豪快に抉られた痕と大穴の空いたビルが目に映った。
 ここは――そうか、あの襲撃者が攻撃した場所、その直線上だ、とエデンは気付く。学校側からは遠のいたが、あの二人からはそれなりに離れたらしい。
 このまま逃げ切ろうと思い、ふと抉られた直線を見て、絶句する。

「………なに、これ」

 そこは道幅20mはある、中心に二車線道路がある通りだった。一定数だが車の通りもあり、道脇には街路樹が規則的に植えられ、中央分離帯に雅な花が植えられ、都会らしい洗練された町並みがあった筈だ。
 それが、まるでアイスクリームをスプーンで一直線に抉ったように破壊されている。
 街路樹は軒並みなぎ倒され、中央分離帯は原型もとどめず道路ごと粉砕。通りに面した窓も、魔鉄製とはいえ鉄脈術の強力さに耐えきれなかったのか粉砕され、内部が剥き出しになっている。その直線状にあった大穴の空いたビルは、傾斜にして15度ほど俯くように傾いていた。

 凄まじい、なんてものじゃない。まるで天災が通り過ぎた後だ。

 今なら両親が、エデンに軍属魔女としての道を勧めなかった理由が分かる。製鉄師との闘いというのは、『これが相手でも逃げずに戦わなければいけない』ということなのだ。訓練で受けた術の危険性よりも目の前の現実は遥かに雄弁にその危険性を語っている。
 ここは聖学校の付属都市で魔鉄がふんだんに使われた建築だから、この程度で済んでいる。しかしこれがもし大都会を除くそこそこの町であったなら、通りのビルは完全にへし折れて数千、数万人にも及ぶ人間が紙屑のように殺されていただろう。

 これは、たかが学生の
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