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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
夏の雪解け3
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あろうが容赦なく布団に身をくるむエイジの姿は見るだけで熱そうだが、体温は適温だ。元から寒がりなのか、それともAFSに隠れて別の病気でもあるのか、採掘を終えた後でもエイジは極度の寒がりのままだった。両親はそれを聞いて少し難しい顔をしたが、日常生活や生命活動には支障がないということで今は様子を見ている。


 朝食。朝ごはんは当番制で、母さん、父さん&兄さん、お姉ちゃん&私&エイジ、という感じで回している。

「今朝はトースト、みそ汁、野菜オムレツ、ししゃも的な魚!」
「前々から思ってたけどトーストとみそ汁の組み合わせはおかしいでしょ!?和か洋かどっちかにしようよ!」
「私は洋にしたいけど、お父さんが和食がいいーって言うから……」

 不平を口にするジョウスケ兄さん。それに口を尖らせる母さんの視線は気まずそうな父さんへと向かう。その奥では、野菜オムレツを割って中の野菜を恐る恐る口に入れているエイジの姿があった。この組み合わせに対して思う事はないらしい。
 と、ジョウスケ兄さんがふとあることに気付く。

「……おいエイジ。ブロッコリーを避けて食べるな」
「ごめんなさい、兄さん」
「前に嫌いなものをすべて残した後、残った嫌いなものを全部食べて青い顔してたろ。残さないのは偉いけど、あんまり無理するな。お前、加減を知らんからな」

 エイジは何というか、おこちゃま舌だ。野菜が苦手でハンバーグみたいな分かりやすい子供受けするメニューが好き。それでも食事を決して残さないのは偉いと思う。ただ、貰ったものを全部食べてしまうため、時々食べ過ぎて苦しくなってしまっているので私がストッパーになっている。
 
 ご飯の後は学校だ。通う学校は家から一番近い『聖観学園』――ではなく普通に近所の学校だ。というのも行方不明のエイジくんの親権などを整理して正規の手続きを踏むのに時間がかかっているらしい。普通の学校には通えるのに聖学校にはすぐ行けないのには理由がある。


 日本皇国という国は、天孫――国で一番偉く、この人が右と言えば右になる人――が君臨しているのだが、この天孫は国の統治に関しては最低限しか口を出さない。なので政治は民主主義で選ばれた政治家が行い、防衛などの軍事は皇国軍が行っている。
 しかし、軍と政府が癒着すれば人権も民意もコントロールが可能になるので、それを望まない天孫は軍と政府の双方に自分の手の者を送り込み、日本が侵略国家にならない最低限のくさびを打ち込んでいる。

 そして天孫の影響力が特に強いのが、魔女と製鉄師、魔鉄加工師およびその高い素養を持つ人物の人権である。
 極論を言うと、軍は民衆から何を言われようが軍事の要になる実戦可能なOI能力者を手元に揃えられれば政府などいくらでも転覆できる。政治家はこの能力者を囲うことで
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