純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 16
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べ物っぽい物と対面する。
漢の無事が、食後の安全性を証明してくれているとはいえ。
黒焦げたパンと匙で掬った跡がくっきり残る灰色のスープの組み合わせは見た目になかなかの殺傷力だ。地味に、けれど確実に、向き合う者の食欲を削ぎ落してくれる。
それでも毅然とした態度で薬を口に含む漢達の背中は、初めから不利だと判っている戦に挑む、勇猛果敢な戦士のそれに似ていて。
プリシラは、そんな彼らの背中に深く腰を折って敬意を示した。
「……ありがとうございます」
約十秒後、薬を飲み下した騎士達も、こちらこそと軽く頭を下げ。
各々の食事を始める。
子供達の賑やかな声が遠ざかる中、自分達で食べてみて本当に大丈夫だと安心したのか、匙を動かすたびに、隠し切れていなかった警戒感が少しずつ和らいでいく。
頃合いを見計らっていたプリシラも。
柔らかな微笑を浮かべるまでに回復した騎士達へ
「私は少々用事がございますので、ここで退席させていただきます。護衛はベルヘンス卿にお願いしてありますから、皆様は食事を続けてください」
と告げ、一人で食堂を後にした。
燭台の明かりがぽつぽつと照らし出す薄暗い廊下を、突き当たりへ向かいまっすぐに歩いていくプリシラ。
その周辺には、ベルヘンス卿どころか、人っ子一人控えていない。
自身の管轄下にある建物の内部であっても、要職に就いている者が単独で行動するなどありえない。中央教会内でさえ、複数の視線に晒しているか、補佐を横に貼り付けて身を護るのが常だ。
護衛が居ない状態での移動は、己の命をドブへ投げ棄てるも同然の愚行。
だがプリシラは、護衛に指名していた筈のベルヘンス卿が現れない事実を当たり前に無視して、静まり返っている廊下を無言で進む。
「あら」
ぴたりと足を止めたのは、窓を開けておいてと手紙に記した部屋の、少し開いた扉の手前。隙間から冷えた夜の風が流れ込んでいる。
斜めに影を落とす絨毯をじっと見つめ……小さく笑う。
「偏見って、恐ろしいものね」
そして、おもむろに扉を開き、なんでもないことのように声をかけた。
「人手は必要かしら?」
真っ黒な室内に差し込む、燭台の灯り。
輪郭を得た、部屋の片隅でうずくまっている小さな人影。
不自然に傾いて今にも倒れそうになっている大きな人影。
傾いたその頭部から足裏を離した直後と思われる姿勢で、宙を翻っている一際小さな人影。
「……っと。あ、ぷりしらさまー!」
一拍後華麗に着地を決めた人影が、吹っ飛ばされて倒れた人影を放置してプリシラへ走り寄り、灯りの下に愛らしい笑顔を浮かび上がらせた。
「ぶじ、おしごとかんりょーですっ!」
少女は左手の指
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