154部分:百五十四.この人
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百五十四.この人
百五十四.この人
この日野資朝という人が東寺の門において雨宿りをしていた時のことです。そこは物乞いがあちこちにいましてその彼等の手足はといいますと捻じ曲がっていたり反り返ったりしていましてその身体中があちこち変形していました。資朝殿はそれを見てあちこちと珍しく変わった生き物だ、これはよく観察してみる価値がある、と言ってそのうえで真剣な眼差しで見ていましたが遂に飽きてしまいました。そうして見るだけでもうんざりとして不機嫌なものになってしまいました。曲がっているよりも普通の真っ直ぐな手足や身体を持っている人間の方がいいものである、と思ったのです。そうして御自身の家に帰ってからそれまで大好きであった盆栽を見てそのうえで自然に逆らってぐねぐねと曲がっているような木を見て喜ぶのはあの物乞い達を見て喜ぶのと同じことであると気付きまして一気に興ざめしてしまいましたので鉢に植えてあったその盆栽を全て掘り起こしてしまってそのうえで捨ててしまいました。
わかるような気がします。これは物乞いがどうかということではなく世の中全てのことについて考えるべきことであります。曲がっているものよりしっかりとしたものの方を尊ぶべきなのです。それがわかっていない人があまりにも多い昨今であります。そのことが嘆かわしいのであります。
この人 完
2009・10・15
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