第五章
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「ここはね」
「任せて欲しいと」
「そうよ、安心してね」
このことはというのだ。
「あたい達に任せてね」
「それでは」
「ええ、街に戻るわ」
武者小路は鑑定士に笑って応えた、だが遠藤もそうだったがその目に笑みはなかった。そうしてだった。
州政府の官庁から移動の術で瞬時に街に戻るとだ、彼は何時になく真剣な調子で遠藤に対して言った。
「わかるわよね」
「長い付き合いだからな」
遠藤はその武者小路に腕を組んで答えた。
「当然だ」
「そう、ならね」
「このことはだな」
「何があってもね」
怒りに満ちた、普段の飄々とした感じは全くない顔と声でだった。武者小路は遠藤に対して言葉を返した。
「このこと、終わらせるわよ」
「わかっている、ではな」
「行くわよ」
こう言ってだった、そのうえで。
二人はドレスを造って売っているデザイナーがいる彼の本店に透明の術を使って忍び込んでだった。
店の隅から隅まで調べた、店は一見普通の場所だったが。
しかしだ、二人は店長室の本棚が動くことに気付き。
そこに隠し扉があることもわかった、扉には鍵がかけられていたがそれも術で開いてだった。そうして。
扉の先に入るとだ、下に降りる階段があり。
そこを降りると服を造る地下工房がありそこでだった。
多くの女達が赤いドレスを着て働いていた、武者小路は彼女達を見て言った。
「行方不明になった人達ね」
「ああ、だが」
「そうね、普通の人じゃないわね」
見れば女達には表情がない、身体も硬い感じだ。それはまるで。
「マネキンだな」
「ええ、そうね」
「しかし人だとわかる」
「これは」
目を険しくさせてだ、武者小路は言った。
「剥製ね」
「そうだな、剥製だな」
「どうやら赤いドレスを着た人の心を操って」
「ここに入れてな」
「そして剥製にしてね」
「働かせているな」
「生きている人を剥製にする」
これまでよりも怒った目になってだ、武者小路は言った。
「とんでもない奴ね」
「恐るべき悪事だな」
「ええ、どうやら服のデザイナーはね」
「とんでもない外道だな」
「そうね、その外道は何処かしら」
剥製になっても魂は剥製の中にあった、そうして操られている女達は声にならない声で泣き叫び嘆いていた。
死にたい、こんな姿でいたくない、言葉になっていないがそうした嘆きが二人には聞こえていた、その嘆きの中でだ。
二人は透明の術を解いた、すると彼等の後ろから声がした。
赤いタキシードを着て口髭を生やした人間の男だった、髪の毛はオールバックにしていて目は異様に血走っている。
その男がだ、二人に言ってきた。
「警察ではないわね」
「ええ、違うわ」
武者小路は遠藤と共に男に身体を向けて
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