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リュカ伝の外伝
バレンタイン・キッス
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、良ければどうぞ」
「ど、どうも……(ゴク、ゴク、ゴク)ぷはぁ〜!! あ、ありがとうございますユニさん」
その哀れさに宰相閣下の秘書の一人であるユニが、自分が飲んでいたアイスティーを差し出した。

「と、兎も角マリーちゃん! もう我が儘を振りまかないで」
「我が儘じゃねーし! 当然の訴えだし!」
この場に居る誰もが我が儘である事を理解している……話の流れが見えて無くても。

しかしそんな中で宰相閣下だけが手を休めずに職務を遂行している。
集中しすぎて周りの状況に気付いてないんじゃ無いのかと思うほど。
「ねぇちょっとウルフ……聞いてる!?」

「あ!? 俺に話しかけてたのか……?」
「そりゃそうでしょ。私がここに来て訴えを起こしてるんだから、当然ウルフに話してるに決まってるじゃない!」

「俺もそう思ってたけど……お前、入ってくるなり『ウルえもん』って叫んだじゃん。だから俺じゃ無いと思ったんだよね。俺“ウルえもん”じゃないし」
「いや……あれは……ネタじゃん!」

「寝てないよ。起きてるよ」
「寝た・寝てないじゃねーよ!」
如何やら宰相閣下は彼女の存在に気付いては居たが、無視を決め込むつもりだった様だ。

「それで……如何した?」
「うん、あのねぇ……」





「……って訳なのよ! ウルフからガツンと言ってやってよ!」

「そうかぁ……ラングストンの奴、困ったもんだな!」
「でしょでしょ!」
訴えの内容を聞き周囲の者が呆れかえる中、宰相閣下だけが真剣に悩んでいる……風に見える。

「何とかしてやりたいのは山々なんだが、アイツは俺の直属の部下じゃない。なんせ国王直属の近衛騎士隊長だ。直属の上司に訴えろ……今なら執務室に居るから」
そう言うと爽やかな笑顔で“シッシッ”と手を振り退出を促す。

「ちょっと……ウルフはこの国のナンバー2なんでしょ! ラン君くらい何とかしてよぉ」
「そうなんだ……俺ナンバー2だから、ナンバー1には逆らえない。ナンバー1の直属の部下に命令なんてとても……何ならナンバー1を呼び出してやろうか?」

普段は直属関係なく命令してるくせに、こういう時だけ上下関係を強調する宰相閣下。
流石は姑息さナンバー1……更に自身のMH(マジックフォン)を取り出し見せつけ追い打ちをかけた。

「「ちょっ!!」」
それを聞いていたピエッサを始め周囲の連中が、ここにそんな理由で国王を呼ばれては堪らんと、慌ててマリーを外へと追い出した。








流石にマリーも父親に説教されたくないので、誰かの手作りのチョコレート手渡し企画は諦め、無難にメッセージカードを配布するだけに止まったという。




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