暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
『どうかこんな日常が』
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の管理をしているようだ。かの店の名前を受け継いでいるとはいえ、流石にもうあのメイド服風エプロンドレスなど着れたものではなく、簡素なフォーマルスーツに出来る女アピールだという伊達メガネを輝かせていて。機嫌よく鼻歌など流してリズムに乗った里香の表情を見ていると、目があった次の瞬間には、ニンマリと今でも変わらない笑顔になると。

「なによ、今さら見とれちゃった?」

「ああ、改めて」

「心がこもってないわねー」

 そんな風に適当な応対をしつつ、やはり山のような雑貨をかき分けつつ、里香の後ろを通ってまだギリギリ雑貨に飲み込まれていない休憩スペースの、店側からは見えないような位置に座り込む。飲み込まれるのも時間の問題だろうが、とにかく今は休めることに感謝しながらコートを脱いで。

「あら、お疲れ?」

「いや、そうでもない。強いて言えば小腹が空いた」

「そろそろあの子も休憩だから待ってやんなさい」 

 カウンターから顔だけ見せてくる里香が無駄話をしている間にも、どうやら優秀な店員がしっかりお客様を満足させたらしく、ありがとうございました、などと声が聞こえてくる。そのままテトテトと音をたてながら走ってくると、里香と同じくカウンターから顔だけ見せてくる店員がいた。

「ショウキ。おかえりなさいませ」

「ただいま、プレミア。調子はどうだ?」

「悪くありません。つまり、バッチリです」

 そうして休憩時間になったのか、そのままプレミアも休憩スペースの中に入ってくる。かつてリズが来ていたようなエプロンドレスを身に纏い、成長したという証明か本来のアバターより少し大人びた身体だが、相変わらず小動物のような動きだった。

『わたしはやはり、ショウキたちの店の店員なのです』

 ――などと。いくら自分探しの旅をしようが、自らの原点に返ってきてしまったのか、変わらないプレミアがそこにいた再会だったことを覚えている。そうしてリズベット雑貨店が出来てから押しかけてきた店員は今や、こちらの世界でも肉体を得て元気にやっている。比嘉さんに実証実験ついでにと頼み込んで出来た肉体のチェックは翔希の仕事の一部でもあるが、おかげさまで安定した給料源となっているとともに、そんな店員がいると話題になってお客様も来るといいことづくめだ。

「では、お茶をお淹れしますね」

「いや自分でやるから」

 ……あいにく自分探しの旅とやらに行ったところで、『店員といえばメイドです』などと、やはりどこかで聞いた話を鵜呑みにするのは変わらないようで。店に来た当初は営業マンのような口振りだったのだが、どうやらトレンドが変わったというか、まあ今の流行りはメイドということらしい。とはいえしっかりと成長はしてきたらしく、今まさに翔希が先に急須を取ったと
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