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SAO−銀ノ月−
『どうかこんな日常が』
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おくことは出来る。英雄の導き手となることを選んだアルゴのように、夢を掴む主役にはならずとも、安心して英雄たちが旅へ迎えるように。こうして、いつでも帰れる場所を用意しておくのが、ショウキがやりたいことなのだと。

 夢を追いかける彼女を応援したい――などと、我ながら立派な夢だと苦笑しながら。


「ふぅ……」

 ……そんな随分と懐かしいことを思い出しながら、翔希は冬の街角を歩いていた。まだ隆盛を保つ駅前の商店街からは、仕事終わりの今にはとても目に毒な場所だったが、《オーグマー》でメールチェックでもして気を逸らそう……と思いきや、拡張現実からも食物たちが胃袋に訴えかけてきたために、とにかく目的地につくことを優先しようとする。

 SAO生還者学校に通って、放課後はALOに集まって、たまに変な事件に巻き込まれたりして。そんな日々が懐かしくないといえば嘘になるが、あいにくと翔希にも仕事が出来てしまっていた。学生の頃に菊岡さんに誘われたままに自衛隊に入隊し、そのまま菊岡さんの部下について今も《オーシャン・タートル》に関する地上の連絡員。そんな当の菊岡さんは行方をくらましているが、たまにくる連絡を神代さんに伝えるのも仕事のうちだ。

 ……要するに、コネ入社からのパシリだ――などと自嘲しながらも、特に仕事について問題も文句もなく。そうして幾度となく歩いた道に誘惑はあれど間違える要素は欠片もなく、地味なコートのポケットに手を突っ込んで暖を取りつつ。目的地――《リズベット雑貨店》に入店していく。

「いらっしゃいませー……って、裏口から入ってって言ってるでしょー?」

「こっちの方が駅から近いんだ。ただいま」

 リズベット雑貨店の店内は、まさに雑貨店という名前に相応しく、それはそれはあらゆるものが置かれていた。現実の雑貨に留まらず、VRからARのものまで置かれていて、あらゆる世界の物品が集まっていると言っても過言ではない。雑貨と雑貨の間に作られた通路を歩きながら、ARで出来た青い小竜が人懐っこく寄ってくるのをあしらいつつ、翔希は店の奥に進んでいく。

「もう……まあいいわ。おかえり、翔希」

 雑貨店がそんな状況になったのは、大体がこの店主のありあまるコミュ力のせいで。今やARもVRも巻き込んだこういった雑貨は、多少以上の心得があれば作れるものとなっており。そうして作っているアマチュアに声をかけ、売名になると商品にさせてもらっているのが多少あり。おかげさまで落ち着かない空間にはなっているが、どんな世界のものでも揃う何でも屋のような様相を呈していた。

「景気はどうだ?」

「ぼちぼちよ、優秀な店員のおかげさまで」

 その店主は雑貨の山の奥の奥にあるカウンターにずっしりと座っており、来ている客の応対を店員に任せて雑貨
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