『どうかこんな日常が』
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
されている。
「なに照れてんのよ。どっちが恥ずかしいと思ってんの?」
「どっちも恥ずかしいならさっさと止めた方がいいんじゃないか?」
「それはダメ……あたしだってね、たまには甘えたい時くらいあるのよ」
そんなショウキの偽装工作などまるで意味をなさず、照れ隠しは無駄に終わってしまうけれど。代わりと言っては何だが反撃のように放った返答に、彼女の言葉のトーンが目に見えて下がっていった。
「…………」
それからはちょっとした沈黙だった。とはいえどちらもソファーの誘惑に寝てしまったわけではなく、リズは相変わらず何がいいのかショウキの膝枕を堪能して、時たまゴロゴロと体勢を変えているほどだ。そしてショウキが天井の木目を数えるのに飽き始めた頃、沈黙を破る口火を切ったのはリズだった。
「ねぇ」
「ん?」
「聞かないの?」
「聞いて欲しいのか?」
「……」
再び、ちょっとした沈黙。どうしてこんなことをしているのか、理由でも聞いて欲しいのかという問いに、リズは少しだけ言葉に詰まったようだ。ただし今回の沈黙は一瞬で、すぐにリズが重たげにだったが口を開いた。
「ちょっとね……家族と言い合いになっちゃって。将来のことで」
「だろうな」
「だろうなって何よ! ……って言いたいところだけど、まあ、ね」
リズの将来の夢は、現実世界で自らの店を構えること。立派な夢ではあるだろうが、それがどれだけ困難であることは素人にも分かる。自分たちの周りに店を構えている者と言えばエギルだが、学生組には出来るだけ見えないようにしていても、たまに難しい表情をしているのが見てとれるほどだ。ましてや修行中という環境下において、そんな現実を目の当たりにしていることだろう。
「……でも、夢なんだろ」
「当たり前でしょ!」
それでも、諦められないのが夢というもので。ようやく天井から眼下にいるリズの顔に視線を合わせてみれば、相変わらずの笑顔がすぐそこにあった。
まるで太陽のような。
「……ごめんね、ちょっと湿っぽくなっちゃって」
「たまには甘えたい時くらいある、らしい」
「……そうね……よし! そろそろ修行再開の時間だから……このままログアウトしていい?」
ショウキの返答を聞くまでもなく。寝落ちログアウトを試すべく、リズが横を向いて瞳を閉じた。本当に耳掻きめいた体勢になったな――などと思ってしまった為にか、ふと見てしまった、少し紅くなっているうなじから慌てて目をそらす。
「ショウキ」
「なっなんだ?」
「何うわずってんのよ、変なとこでも見てた?」
「……見てない」
「……その話は後にするとして。今日は甘えちゃってごめんね。だから今度は――
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ