暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
『どうかこんな日常が』
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
が好きなのだと。そうでもなければ、今もこうして一緒にいるはずもないので、分かりきっていたことの再確認という意味が強かったけれど。

「……言葉に出すっていいもんだな」

 もしかすると、デスゲームから始まった今の関係に、相手は後悔していないだろうか。ガーネットの話を聞いてから、そんな懸念が一片たりともなかったといえば嘘になり――そんな懸念が杞憂に済んだことに、ショウキは胸のつっかえを下ろすように、飲んでいたコーヒーを机に戻すと。

「――――」

 ショウキがコーヒーを下ろしてリズの方を向くのを見計らっていたかのように、そっぽを向いていた方向から急に振り向いたリズに唇を奪われた。次の瞬間には視界全てがリズしか見えなくなるとともに、お互いの唇と唇が交わっていくものの、不意になされたショウキにはなずがままで。

「ふふん。不意打ち、しちゃった」

「…………」

「えへへ。でも、もう少しショウキ成分の補充!」

 お互い名残惜しそうに離れると、リズは唇をおさえながら悪戯っぽくはにかんで。そうして未だに混乱から立ち直れないショウキが復帰する前に、リズはさらに追撃を繰り出してくる。彼女は将来の夢のために店商売を住み込みで修行している最中であり、今日もその暇を抜って来てくれていたのだ――などと現実逃避気味に再確認する程度には、ようやくショウキの頭が回りだした頃には。

「なあ、リズ。そろそろ」

「別にいいでしょ、減るもんじゃないし」

 聞き慣れた声がショウキの耳に届く。それだけならば普段通りのことであるが、今回はその声が届いてくる場所が異なっていた。普段ならば、大体は背中合わせに作業をしているが故の後ろからか、隣にいるが故の横からかだが――今回は、下。彼女の声を聞き間違うはずもない、ショウキの眼下にはリズの姿があった。

「……いつまで続くんだ、これ」

 ソファーに座ったショウキの膝を枕にして、リズがゴロゴロと器用に転がっている。この世界が仮想世界であることを示すピンク色の髪が揺れ、傍目から見れば、まるで子供に耳掻きでもしてやっているかのような情景だろう。眼下でゴロゴロと猫のように甘える彼女を見れば、理由を聞く気も失せるというものだが、いかんせん恥ずかしいことに代わりはない。

「んー、意外にもわりと寝心地がいいから、もうちょっとお願い」

「……はいよ」

 抵抗しても無駄だろうが、流石にかつてない位置にいる彼女を意識すると、自然と頬が熱くなってしまう。大人しくリズの枕に徹しながらも、出来るだけ彼女の方を向かないよう、天を仰いで少し紅くなった頬を隠しながら。手持ちぶさたな両腕は、目の前にある無警戒な頭を撫でてでもしてやった方がいいか、いや流石にそこまでは――と、葛藤の末にだらんとソファーに投げ出
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ