第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
ロマリアにて
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事を頼んだのだが、まだ起きてない仲間がいることに気付いた。
「そういえば、ナギはまだ寝てるの?」
「…………」
シーラと同じで寝起きが悪いのか、こちらの呼び掛けにまともに答えようとしない。もうこれは彼の平常運転ということにして、とりあえず落ち着いて座れる場所を探すことにした。
カウンターの奥には食堂があり、四人掛けの木製のテーブルがいくつか並んでいる。私は一番陽当たりの良い窓際のテーブルを選ぶと、ユウリと向かい合わせに座る。時間帯のせいか、私たちのほかにお客さんは誰一人いない。窓の外を眺めると、眩しいくらいの真っ白な雲と真っ青な空が見事なコントラストを描いている。
………………………………。
うーん、会話がない。
ナジミの塔に行くときなんか、さんざん人の文句ばっかり言ってたくせに、なんでこんなときに限って何も喋らないんだろう。
お互い視線を合わすことなく、時間だけが過ぎていく。
さすがにこの空気に耐え切れなくなった私は、意を決して行動に出ることにした。
「えーと、ユウリ、好きな食べ物って何?」
「それを聞いてどうする」
「いや、あの、えと、い、言いたくないなら別にいいんだけど」
思わぬ反論で、急にどもる私。いや、これは私の質問のチョイスが間違ってたんだろうか。ハラハラしながら次の言葉を待ってみる。
「…………………………………………甘いもの以外なら大体食える」
たっぷり間が空いたあと、ぼそっと、近くにいなければ聞き取れないほどの小さな声で、確かにユウリは答えた。
「え!? あ、じゃあ今度、料理作ってあげるよ。こう見えても料理は結構得意なんだよ」
私はぱっと顔を上げ、思わずそんな約束をしてしまった。
「お前が料理だと? ふん、お前ごときでも何かひとつぐらいとりえがあるんだな」
…………やっぱ約束するんじゃなかった。私は5秒前の自分を呪った。
私が項垂れていると、急にユウリが声をかけてきた。
「…………おい」
「へ?」
けれど、何をためらっているのか、なかなか続きを言おうとしない。
変に口を出したら怒られること必至なので、私は彼の顔をじっと見つつ次の言葉を待った。
「…………なんでもない」
私は心の中で思わずずっこけた。ユウリの「なんでもない」は良くも悪くも心臓に悪い。
詳しく聞こうと思ったが、タイミングが悪いのか、急に上からものすごい勢いで階段を下りていく音が聞こえてきたので、話は中断されてしまった。
「あっ、何だよお前ら、こんなとこにいたのかよー!!」
場違いなくらい大きな声で私たちに近づいてきたのは、言うまでもなくナギだ。
寝起きなのか、寝癖がものすごくひどいことになっている。子供に悪戯でもされたんだろうかってくらいの有り様だ。
「ナギ
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