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人理を守れ、エミヤさん!
真名開示 エミヤシロウ
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・マユは、嗤う。嘲笑う。

「あの歯車は、本来の衛宮士郎の固有結界には存在しません。しかし英霊エミヤには存在します。この二人の最大の違いはなぁんだ?」
「――」
「サービスだ。オレが答えてやるよ。人間か、奴隷かだ。英霊の方のエミヤシロウはアラヤの奴隷だ。……さて問題です。問四。あなたの固有結界にあるあの歯車が指す因果はなんですかぁ?」

 慄然と空を視る。

 なんだ、いやまさか、そんな――そんな訳、そんなはずが――待て、待て待て待て。
 待て。それじゃあ、俺は(・・)そういう事(・・・・・)なのか? 馬鹿な、そんな馬鹿な事は有り得ない!
 だって、士郎は。
 士郎は世界と契約した(・・・・・・・)覚えはまるでないのだから――

 だが、悪であれと祈られた生け贄は、否定する士郎を抉る。事実、それのみが、衛宮士郎を綻ばせる毒となるのだから。

「――エミヤシロウ。テメェはアラヤの抑止力の支援を受けている。
 だから瀕死の重傷を負っても、即死でなければ辛うじて生きられた。
 魔力が足りなくなってたら、何処かから魔力が湧いてきた。
 そしてそしてぇ?
 そもそもテメェは本当に契約はしてないのに、奴隷の歯車(あかし)があるのはなんでか? それは……」

 ――見せてやるよ、テメェは忘れていても、忘れさせられ(・・・・・・)ていても、その体に積まれた歴史は誤魔化せない。

 心象風景が歪む。足元がぐらついた気がした。士郎は呆然と、その光景を見る。移ろう場面の連続は、第五次聖杯戦争の記録だった。



 「――問おう。貴方が私のマスターか」



 それは、月下の出会い。

 衛宮士郎は、可憐な少女騎士と出会った。
 青い槍兵に心臓を穿たれ、遠坂凛に命を救われて。生き延びた士郎を、青い槍兵が再び始末に来た。土蔵で士郎は運命と出会ったのだ。
 そして遠坂凛と赤い弓兵の二人と共闘する事になって。冬の少女と狂戦士と戦って、そして――

 魔術師の英霊は、魔術王だった。

「――は?」

 そしてそのマスターは、枯れた殺人鬼ではなく見知らぬ男だった。

 魔術王と騎士王が戦っている。高い対魔力を活かし、苦戦しながらも善戦していた。召喚される魔神、士郎に仕掛ける男。アルトリアは士郎を庇いながら、その場から辛うじて撤退した。
 それから幾度となく騎士王と魔術王は競う。最高峰の対魔力を持つ騎士王を除き、魔術王に敵う者はいなかった。令呪を奪われれば、容易く自害させられる。士郎は早々に全ての令呪を使い切って令呪による妨害を阻んでいた。
 だがそれは賭けだった。令呪という切り札をなくして、魔術王と戦わねばならないなど。敵として魔術王に立ちはだかれたのは、令呪を敢えて使いきった士郎と遠坂凛達
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