暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
真名開示 エミヤシロウ
[2/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
あ無理だわ。テメェの精神、マジ鉄壁。つけ込む余地がねぇし、反転しても今のままとか何よそれ。時間ないから打つ手なしだ。なんだよ中立中庸とか。正義の味方なら善だろ普通。反転したら悪になるもんだろ?」
「生憎だったな。俺は善じゃない。俺は俺の為に人理を正す。俺が死なない為に。他は俺が助かるついでに掬い上げるだけだ」



「 本当に? 」



 その顔に、亀裂が走る。黒い影法師が、醜悪な笑みを浮かべている。士郎は理由もなく背筋が凍る心地を味わった。

「つけ込む余地はねぇよ、テメェには。けどよ、抉る事は出来るぜ」
「……抉る、だと?」
「これでもこの世全ての悪なんてぇ大層な祈りで昇華した存在だ。成す術なく大人しく消えるなんて、つまんねぇ最期は迎えねぇよ。こちとら呪いで飯食ってんでね」
「……」

 目を細める。抉るだと? 何を、どのように。脛に傷を持つ、後ろ暗い生き方はしていない。抉られて痛むものはない。
 下手に心の隙を晒せば、アンリ・マユに何をされるか分かったものではなかった。ロマニがアンリ・マユを消すまで気は抜かない。心を固める。そしてアンリ・マユを促した。ここは聖杯の中、聞かないふりは通用しないだろう。耳を塞いでも声は聞こえる。そういった素振りを見せたら却ってアンリ・マユは調子に乗るに決まっていた。

 いけしゃあしゃあと、アンリ・マユは揶揄する。

「今まで大変だったなぁ、エミヤシロウ? 第五次聖杯戦争からこっち、十年以上誰に言われたわけでもないのに世界に出て、他人を救って回ってたんだろ? ご苦労様だね、とても真似できねぇよ。ああ、目の届く範囲にある不幸が我慢ならない――だったか? 泣かせるねぇ。聖人かなんかなの? おたく」
「……」
「挙げ句一人じゃ何も変えられねぇってんで、なんか慈善事業団体作ろうとしてたんだろ。パトロン探してロンドンまで行って、アニムスフィアにカルデアに誘われた。この旅が無事終われば、おたくは契約通りにアニムスフィアの後援を得られる。そうしてまた目の届く範囲の不幸を根絶しようと宛もない旅を始める。一大スペクタクルな人生だドラマに出来る」

 ――ところでさぁ。

 滴り落ちる毒意。士郎はその言葉の意味が分からずに困惑する。

「知ってっかよ、エミヤシロウ。テメェの一つの未来の可能性、その末路の掃除屋もさ、その属性は中立中庸なんだぜ(・・・・・・・・)

 英霊エミヤも士郎と契約しているのである。マスターである故に、そのパーソナリティーは把握していた。
 そして士郎が知っているなら、アンリ・マユも知っている事になるのだ。だから別段、アンリ・マユに言及されて驚く事ではない。
 要点は、なぜそんな事を言い出すのか、だ。

「……何が言いたい?」
「不思議だよな?
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ