撹乱する意思の蠢き(下)
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「お邪魔させてもらう、ウェイバーくん」
「は? えっ? ……ちょっ、らららライダー! コイツも乗せるとか正気かよ!?」
言われつつも、ライダーは雷牛に鞭をくれ、戦車を暗い上空へと駆け上がらせている。征服王は十を超える触手を巧みに躱しながらも己のマスターを叱責するように諭した。
「ウェイバーよ。彼奴に今、最も有効打を与えられるのはランサーのマスターだ。しかしその男には機動力がない、一ヶ所に留まっていては餌食となろう。なに、心配するな。もし不埒な真似をすれば、その瞬間に余が貴様の仇を討ってやる」
「そういう事だ、俺が君に手を出せる所ではない。安心しろ」
小心なウェイバーが、そう言われても安心出来る訳もなかった。
宝具の投影など、封印指定されるのも確実の異能である。明らかに人間業ではないそれを目の当たりにし、魔術師の端くれである少年が気を抜けるはずもなかった。
だがウェイバーの不安など考慮していられる状況ではなかった。ライダーは触手が戦車に触れそうになるのをキュプリオトの剣で斬り、雷撃で払うも、こうも集中砲火を浴びれば危うくなる。ライダーは士郎へ詰問した。
「ランサーのマスターッ! 足場を安定させてはやれん、狙えるかッ!」
「厳しいな……狙えはする、しかし些か触手が目障りだ。ああも射線上に肉塊の柱があれば、狙いが逸れるかもしれん」
それに人の身で過度の投影を繰り返しているのも問題だ。顔色一つ変えていない士郎だが、魔術回路は焼ききれる寸前。英雄王との戦線を離脱するまでに魔力を使いすぎ、今も魔術王やマシュへの魔力供給を続行しているのである。
ジジジ、と士郎の右耳の皮膚が壊死し、黒ずんでいる。もはや螺旋剣の投影は後一射が限度だろう。必中を確信するまで放てはしない。
征服王は舌打ちする。しかし士郎はなんとなしに見抜いていた。
――知能の欠片もない怪物が、何故俺に狙いを絞る? 危険を察知する本能すらない類いだろうに……。……なら、こんなのはどうだ?
「セイバー!」
地上、水面上を駆け、大海魔に剣撃を浴びせ続ける少女騎士に要請する。予想が正しければ行けるはずだ。
士郎は一旦螺旋剣を戦車の中に置き、なんの変哲もない矢を投影する。その鏃もつけていない木の矢に文字を刻印する。その矢をセイバーに緩く放った。
殺意もなく、直前に呼び掛けられたこともあり、直感に従ってその矢をセイバーは掴み取った。瞬時にその一文を読み取ったセイバーは素早く大海魔から距離を取り始める。
――流石ッ、判断が早い。
士郎はライダーに言った。
「ライダー、大海魔の直上へ行ってくれ」
「おうッ、任せよ!」
螺旋剣を手に取り、黒弓につがえる。触手が追い立てて来るが、しかしその動きが鈍った。
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