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人理を守れ、エミヤさん!
撹乱する意思の蠢き(上)
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「くぅぅうう!?」

 楯の質量で王に一撃を加えんとするマシュの護りに、楯の上から剛?を放つギルガメッシュである。宝具の補助により筋力を大幅に増強させた黄金の斧の一撃は、マシュの膂力を上回り輝舟上より弾き飛ばした。
 瞬く間にマシュを虚空に置き去りにした英雄王は、玉座に戻りながら言い捨てる。

「は、未熟極まる! 我を地に落としたければ必殺の覚悟を抱いて来い! 此処で死ぬか、真なる聖者の器よ!」

 翔ぶ術なきマシュは慄然とする。輝舟は飛び去り様に三十挺もの剣槍を放ってきていた。重力に引かれ落ち行くマシュに、それを躱す手立てはない。死――脳裏に過る予感を士郎とロマニが阻まんとするも、それよりも迅く救いに馳せる黒影在り。

「――!?」

 それは戦闘機を操る黒騎士である。
 大海魔へ接近していた二機の戦闘機、その内の一機に乗り移って、宝具『騎士は徒手にて死せず』によって宝具化させたモノ。
 士郎はそれの正体を即座に察する。カルデアの百貌のハサンから伝え聞いていたその正体。湖の騎士、ランスロット。
 マシュの霊基との関係は――そこまで考えた士郎は即決した。

「――バーサーカー!」

 桜を傍らの魔術王に預け、叫ぶ。

マシュを頼む(・・・・・・)!」
「■■■■■■――ッッッ!!」

 黒騎士は宝具化した戦闘機の上で、マシュの華奢な肩を抱き支えながら吼えた。それは返答だったのかもしれない。
 それを聞き届けるや、士郎はロマニに言う。

「こっちは任せた、俺は青髭に対処する!」
「……ああ、任せてくれ! けど桜ちゃんは君の腕の中をご所望だ、すぐに終わらせてくれよ!」
「当たり前だッ」

 不安に揺れる桜に一瞬笑みを投げ、士郎は駆ける。

 マシュは不思議な感覚に、黒騎士を見ていた。

「貴方は……」
「……」
「いえ、なんでもありません。――狂化していれば(・・・・・・・)駄目な所のない父ですね(・・・・・・・・・・・)

 微笑みが溢れ、マシュのものではない独白が無意識に溢れ落ちる。複雑な親愛――本来とは異なる器の親子が空を馳せ、黄金の英雄王を撃ち落とさんと飛翔する。







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