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人理を守れ、エミヤさん!
撹乱する意思の蠢き(上)
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、序列十八位の魔神バティン! ……マスター!」
「ああ!」

 ――前世にてただの一度も感じなかったその不遇が、人となった魔術王の心を燃え上がらせる。
 青褪めた巨馬に跨がり、蛇の尾を持つ頑健なる貴人が召喚される。意志なき魔神は空間転移を容易とする魔術式だ。其れは士郎が待機させていた投影宝具に干渉し、瞬く間に黄金輝舟の全方位を囲むように配置する。
 固有結界の内ではない故に、士郎に全方位攻撃の手立てはない。固有結界に英雄王を捕らえようにも黄金輝舟に搭乗されていては捕捉する事も能わない。故に全力の補助を宛がうのだ。

 魔術王――否、ロマニの合図に士郎は阿吽の呼吸で応じた。投影され実体もないまま待機していた宝具。刹那に撃ち放つは贋作の霰。

全投影(ソードバレル)……連続層写(フルオープン)……ッ!」

 真作の輝きにも迫る贋作が英雄王へ迫る。しかしそれすらも英雄王は容易く対処した。
 未来視。其処(・・)へ来る事など最初から分かっていたように迎撃宝具が贋作を撃ち砕く。だが、人を超えた視座の対処を、人の戦術眼は当然のように予期していた。
 士郎は胸に抱える桜を護る。ぎゅぅうと目を閉じ、冠位魔術師の強化によって乗用車を置き去りにする速度で駆ける士郎に必死にしがみつく少女を確りと抱えたまま、傍らに追走する楯の少女に告げていた。

「行けるな、マシュ」
「はいっ!」

 楯の少女が答えるや、己の魔術のサポートに回っていた魔神バティンに目配せする。
 転瞬マシュの姿が消えた。英雄王が微かに目を瞠る。そして凄絶な笑みを浮かべた。己の輝舟の中、王の眼前にマシュが突如として現れたのだ。
 空間転移である。裂帛の気合いを爆発させ、マシュ・キリエライトが吼えた。

「やぁぁああああ!!」
「フ――興じさせるではないか、道化!」

「――来たれ地獄の大伯爵。序列三十四位の魔神フュルフュール――来たれ、来たれ『色欲』司りし西方の魔王! 序列三十二位の魔神アスモデウス……!」

 同時。魔術王は自身に費やされていた令呪の魔力を全て燃焼させる。召喚されしは二柱の魔神。一撃の雷光を以て青髭を海魔の群れごと焼き払った魔神フュルフュールと、魔王とすら渾名され、嘗ては魔術王への反逆を成した事もあるアスモデウス。
 牛と人、羊の頭を持ち、ガチョウの足と毒蛇の尻尾を備える魔神の王。地獄の竜に跨がる異様な偉丈夫は、軍旗と槍を掲げ、その口腔より灼熱の獄炎を熱線として吐き出した。

 雷光と熱線は英雄王の迎撃宝具を焼き払い、輝舟の軌道を制限して、瞬きの間のみ輝舟上のマシュの足場に安定を齎す。ギルガメッシュは嗤い、宝物庫より嵐の斧を取り出すや、迫るデミ・サーヴァントへ王自ら迎え撃つ栄誉を賜した。

「風を放つ――踏ん張れるか娘ッ!」

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