強えええ!してみたかったんだね士郎くん!
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――荘厳なりや、神の家。
草木も眠る丑三つ時、その庭に侵入する人影在り。
改造戦闘服と魔術礼装の射籠手、外界への護りである赤い外套を纏った常の形態。
白髪の男は腰の剣帯に吊るした白黒の雌雄一対剣を揺らしながら、鷹の目に無機質な光を湛えながら歩を刻む。
「神の家多すぎだな。一軒ぐらい減っても神も気づかないだろう」
世界中の基督教圏に点在する教会の総数を数えつつ、不穏な呟きを漏らして男は魔術回路を励起させていた。
投影開始、と。投影した剣群は最後の一工程でストップし、実体を持たせないまま虚空に浮かべ待機させている。
神の別荘取り潰し案件だ。狭い島国の敷地は神社一択でと、割と罰当たりな事を考える匠は仕事に取りかからんとしていた。
ギィ、と扉の金具を軋ませながら、男は教会に踏み込んでいく。中には老神父が、その到来を前以て察知していたように待ち構えていた。男は冷徹な愛想笑いを面貌に滲ませ、両手を広げてフレンドリーさをアピールする。
「こんばんは、神父様。佳い月夜だ」
良い夜ね、良い月ね――それらの文言はこの白髪の男にとっては殺害予告に等しい台詞である。実際その台詞と共に義姉に襲われた経験のある男は、不吉な声音に妙なリアリティを持たせられた。
そういえばあの夜は、教会からの帰りだったなとどうでも良い事を思い出す。……本当にどうでもよかった。今夜は帰る前に使われる台詞である。
老神父はその殺害予告を額面通りに受け取ったらしい。言峰綺礼の実父にしては高齢だが、人柄は良いらしい。人の良い笑みを浮かべ、形だけは歓迎する格好を見せている。
「こんばんは。確かに良い夜ですな、お客人。して、何用ですかな? 見たところ令呪をお持ちのようで、サーヴァントも健在らしい。聖杯戦争に参加するマスターが此処にやって来る用件など限られておりますが――もしや、棄権なさるおつもりで?」
「いや。そんなつもりはない。今日は別件で訪ねさせて貰った」
一歩、二歩とゆっくりと歩み寄りながら、硬いブーツの踵を鳴らす。己の間合いに老神父を捉えるやピタリと静止し、白髪の男は単刀直入に本題に入った。
「お宅の息子さんに用事がある」
「……綺礼にですかな? はて、あれに貴方のような知り合いがいるとは知りませんでしたな」
「一方的に知っているだけだよ、ご老体。ああ遠回しにやり取りするのは無しにしよう。俺も暇じゃあない。アサシンのマスターである彼を殺しに来たんだ」
「――!」
ピリッ、と老神父の眉間に緊張が走る。
息子を殺しに来たと聞かされ、気が気でないのだろう。穏やかな口調こそ変えなかったが、その眼差しに不穏な敵意が混ざるのを隠しきれていなかった。
年の功と強靭な精神力
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