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人理を守れ、エミヤさん!
因果は回るよ士郎くん!
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 辺りの目も気にせず、巨漢は叫んだ。

「余の名は征服王イスカンダル! 其の方もさぞかし名のある王と見た! これより騎士王と金ぴかを交え、酒を酌み交わさんと考えておるが、うぬもその席に着いてはみんか!?」
「ちょ、おまっ、また真名出してんじゃねぇですよこの馬鹿ーっ!」

 自身のマスターの魂の叫びに、しかし征服王イスカンダルは耳も貸さず。
 対する青年は、指先ひとつ動かすだけで周囲の目と耳を散らして微笑んだ。

「――酒が飲めるのか。ツマミが出るならご相伴に預かろうかな。ちょうどお腹減ってたし」
「んっ、ツマミとな?」

 青年の言葉に、イスカンダルは虚を突かれる。酒のツマミ、それは確かに大事だ!
 忘れていたとは不覚である、どこで調達したものか……。悩ましげに唸るイスカンダルをよそに、少女が慌てたようにあわあわと手を振った。

「ど、ドクター!? そんな勝手な……!」
「ん? 何か問題あったかな」
「先輩に訊かなくていいんですか!?」
「いいんだよ別に。アイツの言うことなんか無視だ無視」
「せんぱぁい! ドクターがご乱心です!」

 青年のマスターらしき少女と小声でやり取りし、青年はなんら気負う様子もなく歩み寄る。
 そして悪戯っぽく言った。まるで場の空気も読まず、堂々と。別に深い考えもなく。

「それより、名乗られたなら名乗り返さないとね」
「えっ」
「私の名は魔術王ソロモン。キャスターのサーヴァントだ。で、こっちがマスターのマシュ・キリエライト。よろしく頼むよ、名にしおう大王様?」

 まさか名乗り返されるとは思いもしなかったイスカンダルは驚嘆した。
 余の目に狂いはなかった! 時代を冠する偉大な王とまみえられるとはな!
 興奮も露に感嘆するイスカンダルを横に。そのマスター、ウェイバー・ベルベットは。魔術世界の神とも言える名が飛び出たことに魂消て口をぱくぱくと開閉させるしかない。
 ソロモンは自身の大それた言動にまるで価値を感じてはおらず、頭にあるのは自身を嵌めてくれた輩への報復ばかり。先程片手間に滅した(・・・・・・・)本来のキャスター、青髭の件もある。胸糞悪い気分にさせてくれ、マシュが危うくあの(・・)光景を見そうになったのを防ぐのに大いに神経を磨り減らしたのを、彼は完全に自身の友人のせいにしていた。

「彼を一発殴る権利がボクにはある。だよね、マシュ」
「うっ。……私もそれは否定できませんけどっ」

 今頃幻の青年を相手に取り調べを続けているだろう警察の人達に同情しつつ、流石に弁護できないと項垂れる少女。
 こうして、そうとは知らずにロマニ・アーキマン――魔術王ソロモンは王の宴に招かれた。その場に憎きあん畜生が居合わせている事を、神ならぬ少女はまだ知らず。

 
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