因果は回るよ士郎くん!
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の差異が大きくなるのは自明。聖杯か何かの力で『世界』に貼り付いてる死の世界を、なんとか剥がしてしまえばいいのかもしれんな」
言いながら、クー・フーリンを見た。なにか思うところでもないかと気遣ってみたが、特に何もないらしい。飄々として、何も含ませずに言い捨てた。
「なんでもいいけどよ。向こうの面子だけで片がつくならそれでいいだろ。ま、手に余るようならこっちが終わった後に出向いてもいいぜ、オレは」
「こっちを終わらせてからの話になるがな」
さて、と俺は気持ちを切り替えホテルを引き払う。何日も同じ場所に陣取るほど抜けてはいない。
俺はクー・フーリンを連れてある場所を目指す。遠坂時臣との件を考えれば、我ながら面の皮が厚いと思われるかもしれないが、厚顔無恥も使い方によっては武器となるものだ。
いつか通った道を辿り、目的の森へ踏み込んでいく。罠の類いはメンド臭かったのでクー・フーリンの戦車で潰しながら進んだ。
「快適だなこれ」
「だろ?」
「都市部以外が戦場になったら、もうこれで移動したんでいいと思うな」
バイクとか要らね、と本気で思ったが、まあないよりはあった方がいいかもしれない。
しかし荒れ地の方はもう、問答無用で走破出来る戦車に搭乗したかった。
森林を薙ぎ倒し、進んでいく。やがて見えてきたのは、懐かしのアインツベルン城だ。
戦車で現れたのが俺とクー・フーリンであると予め察知していたらしいアルトリアとアイリスフィールが、最大の警戒心を持って出迎えてくる。
俺は言った。
「まあ待てご両人。過日の言の通り、態度を変えてきた」
訝しげな彼女達に、俺は微笑み掛ける。
アイリスフィールを手に掛けるつもりのない俺にとって、アルトリアを倒しきるのが困難となれば、取れる手段など一つか二つだ。この局面で最も理想的な案がこれである。
「同盟を申し込みに来た。仲良くさせてほしいな、王様にお姫様?」
遠坂陣営に情報を上げてきたことなど露ほども感じさせず、イギリスで培った厚かましさで俺は申し出たのであった。
――酒樽を担いだ赤毛の巨漢は、戦車に乗り込む寸前にゆるい空気の男を見かけた。
眼鏡を掛けた白衣の少女を連れている。巨漢は無意識の内に声を張り上げていた。
「おぉい、そこの者ら! 少し待たんか!」
直感に突き動かされるまま呼び掛けると、色彩の薄い少女は目を丸くして固まり、癖の強い白髪の青年は、この時代に見合わぬ衣装姿のままゆったりと振り返る。
余裕と知性の滲む物腰に、巨漢の顔に骨太な笑みが浮かんだ。
数多の地を征服し、数多の王を見、降してきた彼の眼力が捉えたのだ。
青年の呼吸に、王気とでも呼ぶべき器があるのを。
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