青天の霹靂だね士郎くん!
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断した。
跳ね起き様に聖剣を横薙ぎに振るう。風の鞘に包まれた不可視のそれ。掠りもせず、地表に張り付くかの如く伏せた槍兵に躱された。構わない、元々牽制のための一閃、体勢を整えるための呼気。
ちり、とうなじに電気が走る感覚。
回避に転じるのと同時だった。獣の如く地に伏せた状態から、蒼い槍兵は槍を立て体を捻転させた。軽々と繰り出されしは回し蹴り。首を刈る軌道。
仰け反る。鼻先を掠めた。途方もない威力を風に感じ、直撃すれば一撃で死ぬと理解し戦慄――する間もない。蹴りを放つも、躱されるのは織り込み済み。そう言わんばかりの攻め手。立てた槍、軸にしての回し蹴り、その反動を利して体を持ち上げ、虚空で身を捻り槍を大上段より振り下ろした。
獣どころではない。
魔人の挙動だ。
体が勝手に動いた。掲げた剣で辛うじて頭をカチ割られるのを防ぐ。
遠心力、単純な膂力、押し負けそうなのを魔力を放出して堪える。そのままセイバーの剣を支えに虚空で更に身を捻る槍兵。脊髄に氷柱を叩き込まれたかのような寒気。
威力は低いが回避は成らず顔面に蹴撃を叩き込まれ、セイバーは思わずたたらを踏んで後退した。意識が一瞬白む。その曖昧な意識の中、漸く思う。速い、と。
それでも剣を正面に構え、辛うじて戦闘体勢を堅持した。
ランサーが言った。槍を旋回させて穂先で地面を削りながら。
「命令は全力だ。オレがどれほど出来るかマスターに直接見せる、初の戦いでもある。出し惜しみはしねぇ」
言うや否や、風車の如く回転させ、槍の先で削った地面が仄かに光る。
それは一種の文字。ルーン文字。込められた魔力は――
「ルーン……魔術……!?」
空中に踊る無数のルーン文字が、ランサーの肉体に入り込む。それは耐久、筋力を増強させるもの。
「セイバー!」
予期せぬ圧倒的な流れ。焦りながらも、アイリスフィールは叫んだ。
その意を、セイバーは過たず受けとる。そして瞬時に構えを変えた。打ち合い、戦うのではなく。全身を魔力で覆い、徹底的に守りを固める防御体勢。――それに反応したのはランサーではない。
士郎だ。
ぴくりと眉を跳ねる。特異点化の原因を考えていた。なんらかの差異があるのは確定的。
さて。何があると観察に徹し、ランサーの文字通りの目にも留まらぬ速さに感嘆しつつ、まだ速くなるのかと感心し。セイバーの防御体勢に違和感を捉えた。
セイバーの気質はよく知っている。彼女は極端なまでに勝負強く、また極端に負けず嫌いである。
そのセイバーが、ろくに反撃すら出来ないまま防御を固めるだと? あんな構えでは、本当に防御しか出来ないではないか。堪え忍び、ランサーの動きを掴もうという算段か?
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