割と外道だね士郎くん!
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「こちらは名乗ったのだ。貴様も名乗ってはどうかね?」
ケイネスが不敵に問うと男は慇懃に応じた。
「エミヤ、といえば伝わるか」
「――何?」
その悪名は時計塔にも鳴り響いていた。
曰く、魔術師殺し――野蛮な近代兵器を用い卑劣な手段で魔術師を屠る魔術師の面汚し。
もしも機会があればこの手で誅伐してやろうと常々考えていた野良犬。
不愉快げに歪んだ眉根に、男は苦笑した。
「おっと。誤解があるようだ」
「誤解だと?」
「如何にも。確かに俺はエミヤで、ロードの思い当たっただろう魔術師殺しではある。だが、俺は別に卑劣な手法で魔術師を狩る卑怯者ではない。大方、ロードの聞き及んだ俺の風評は、俺が自分で流した悪評だろう」
「自分で悪評を流しただと? なんのために」
「この秘密を露見させないためさ」
言って、エミヤは腰から螺旋状の剣を抜き放った。
白と黒の夫婦剣――ではない。それよりも高位の、神秘の位階の高い宝具。
そう、宝具だ。
ケイネスをして瞠目する。そして男の言に納得した。
「貴様、『伝承保菌者』か!」
「俺が自らの悪評を流してでも隠すものはこれで、そしてそれを知ったからにはただでは帰せなくなったぞ、ロード=エルメロイ」
「ふん。なるほど、『伝承保菌者』ならば相手にとって不足はない。いざ尋常に立ち会おうではないか!」
ふ、とエミヤは不敵に笑いつつ、言った。
「ああ――その前に。これは善意なんだが、足元に注意した方がいい」
「な、」
足元を見る。そこには、白と黒の夫婦剣が落ちていた。
これも宝具。看破したケイネスの眼力は確かで。次の瞬間、その剣が内包する神秘が暴走しているのに、咄嗟に水銀の礼装を解放し守りを固め。
現代の魔術師の礼装如きが、宝具による『壊れた幻想』を凌げる道理などなく。
あっさりと爆発に呑み込まれ、だめ押しに投影していた偽・螺旋剣を下投げで投げ込んで、跡形もなく消し飛ばした。
「……ランサーの宝具解放のタイミングに合わせはしたが、中々難しかったな」
爆風に煽られつつ、そう呟いた男の名は衛宮士郎。
二十年後の未来、魔術師殺しの再来と呼ばれた魔術使いである。
――彼は正直者なので、謙遜以外では何も嘘は言っていなかった。
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