第三章
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「型を取ってきました」
「西施の顔をか」
「人の顔の形は髑髏に既に出ていまして」
「髑髏の型を取ればか」
「はい、まさにです」
「西施の顔になるのか」
「その西施の顔をです」
まさにそれをというのだ。
「貂蝉殿に移します」
「そうしてくれるか」
「そして肝ですが」
華佗は今度はこちらの話をした。
「これはです」
「うむ、次はそれだが」
「実はです」
「荊軻にしても四百年は前の者だ」
王允は彼についても述べた。
「西施よりは新しい時代だが」
「それでもですね」
「四百年も前の者なぞ」
墓の中でというのだ。
「もう骨になっているぞ」
「西施殿と同じ様に」
「五臓六腑もなくなっておる」
「しかしそれでもです」
「荊軻の肝を持って来たのか」
「はい、実はそれがしは仙術にも通じていまして」
ここで華佗は種明かしをした。
「西施の顔は先程お話した様に撮りましたが」
「荊軻の肝はか」
「骨に仙術を施し肉を戻し」
荊軻の骨となった亡骸、墓の中でそうなっていたそれにそうしたというのだ。
「そしてです」
「肝を取り出したのか」
「そうして腐らぬ仙術を掛け」
取り出した肝にもそうしたというのだ。
「そしてです」
「ここまで持って来たのか」
「では早速貂蝉殿の腹を割きます」
「腹を割けば死ぬぞ」
「ご安心を。身体を眠らせ動けなくする薬があります」
また言う華佗だった。
「その薬で貂蝉殿に眠ってもらい」
「その間にか」
「貂蝉殿の肝を荊軻の肝に代えて」
そうしてというのだ。
「開いた腹は縫って元に戻します」
「嘘の様な話だな」
「それがしだからこそ出来ます」
華佗だからだというのだ。
「そして肝の後で」
「顔もか」
「西施の顔にします」
「そうしてくれるか」
「すぐに」
こう言ってだ、華佗は手術にかかった。自身が言う様に貂蝉に麻酔をかけた後で腹を割いて荊軻の肝を入れてだった。
顔を西施のものにした、その二つの手術が終わってだ。
王允にその美しくなりしかも勇気もついた貂蝉を見せて語った。
「これで、です」
「ことを果たせるか」
王允は顔が別人のものになった義娘を見つつ華佗に応えた。
「確かに顔はよくなったしな」
「しかも肝もです」
「荊軻のものになったからか」
「あの始皇帝を殺そうとした」
後にこの国を統一し恐ろしいまでの威圧感を持っていたというあの始皇帝をだ。
「その者の肝を」
「ではか」
「はい、必ずです」
「董相国と呂将軍の間を割き」
「お二人を争わせられます」
「そして共にか」
「どちらかを取り除けます」
華佗もこう約束した。
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