第三章
[8]前話
その空席を見てだ、彼の下に集う側近達に言ったのだった。
「まずはそこにある空の玉座だ」
「そちらをですか」
「どうされますか」
「即刻どけて砕き破片はナイルの川に流すのだ」
つまり完全に消し去れというのだ。
「よいな、そしてまつわるものもだ」
「全てですか」
「玉座の様にせよ」
「そう言われますか」
「全て壊し焼き削りだ」
そうしてというのだ。
「出来るなら全て川に流せ」
「聖なるナイルの川に」
「そうしてですか」
「何もかもなくすのだ、無論碑の名もパピルスにあるそれもだ」
そういった公のものにある名までもというのだ。
「削ってしまうのだ。よいな」
「わかりました」
「それでは」
「ファラオは誰であるか」
トトメス三世は側近達にあらためて問うた。
「このエジプトの主は」
「はい、貴方様です」
「貴方様だけです」
側近達もすぐに答えた。
「他の誰でもありません」
「貴方様だけがそうであります」
「そうだ、エジプトのファラオは私だけなのだ」
トトメス三世は玉座から述べた。
「そしてだ」
「そうしてですね」
「これより」
「政を行う」
彼のそれをとだ、こう言ってだった。
トトメス三世は彼の政をはじめた、軍を東に進め他の勢力と戦い勝ちエジプトの領土をこれまで以上に増やした。
そしてだ、正式にファラオという名を王を指す言葉としたという。ファラオという呼び名は彼が定めたというのだ。
だがハトシェプストの名は長い間忘れられ古代エジプトについての学問が進んでようやくわかった程だ。
女性のファラオもいた、しかしその存在は義理の息子であるトトメス三世によって何もかもが徹底的に消され残っているものは僅かとなっている。そこから学び取れるものは僅かだ、だが僅かに残っているものから読み取れることはある、古代の偉大なファラオは義理の母と確執があり憎みそれが為にその母のことを徹底的に消したという。そのことが今も言われている。異説もあるが古来より血はつながっていないとはい母と子の確執がありそれが政策での衝突や権力闘争につながることもあったということか。最早遥かな古代のことである、しかし人間達の行いは古代も現代も変わらないということか。そして未来でも。
母子 完
2018・9・12
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