第二章
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「家の戸口に投げられた肉を食べています」
「そなたは家の中にいないのか」
「はい、外で犬と一緒に暮らしています」
「そうなのか」
「犬と共に食べて犬と暖め合って寝ています」
「辛いな、ではだ」
そこまで聞いてだ、月はアヌィスにこう言った。
「その暮らしから離れたいか」
「是非。私は奴隷になるまではある村で幸せに暮らしていましたが村を賊達に襲われ」
「その賊達に奴隷として売られたのだな」
「捕らえられたうえで」
「そうか。そして村はどうなった」
「親も多くの人が殺され生き残った者が捕らえられ奴隷に売られ」
「もうその村はないか。つまりだ」
月はアヌィスの言葉を聞いて頷いた、そうして言うのだった。
「そなたは帰る場所もないか」
「何処も」
「そしてこれからも犬と共に暮らすか、奴隷として」
「この暮らしが続けば」
「それは嫌だと言ったならばだ」
月は娘の境遇に思うところが出来た、そしてだった。
アヌィスにだ、静かな声で告げた。
「私の世界に来るのだ」
「お月様の世界にですか」
「そうだ、月はその場所より遥かに暖かく水も食べものも苦労して手に入れる必要もない」
「そうした場所ですか」
「しかも誰も奴隷になることもない」
奴隷であるアヌィスに言うのだった。
「だからだ。どうだ」
「お月様の世界にですか」
「来るか」
「若し許されるなら。この犬と共に」
アヌィスは今も自分を気遣って寄り添う犬を見てから月に答えた。
「宜しくお願いします」
「それではな」
「はい、それでは」
アヌィスは月を見上げ応えた、そしてだった。
犬と共に月の淡い光に包まれた、そうしてその光が消えた時にだった。
とても暖かく誰もが笑顔で果物も魚も肉も好きなだけ手に入られ水もすぐ傍にそれこそ飛び込んでも寒くないまでに温かいものが豊かにあった。その世界に入って。
アヌィスは犬と共に幸せに暮らした、だがそれを彼女と犬の主の家の者達は知らず。
どうしてアヌィスがいなくなったのか不思議に思った、だがある日のこと。
夜にアヌィスがいないので仕方なく家族で水汲みを続けている中で月を見てわかった。何と月の表面にだ。
桶を担いだ娘、アヌィスのその姿があった。それで彼等もわかったのだ。
「そうか、アヌィスは月に行ったのか」
「月の世界に行ったのか」
「それでもう家にいないのか」
「帰って来ないのね」
そのことがわかった、そうして自分達で働くのだった。以後この家には奴隷も犬も来ることはなく家族達だけで寒い中でも働くしかなくなった、だがアヌィスは。
今も月で犬と共に幸せに暮らしている、そして人の世界で働いていた時の姿はその時のことを忘れない為に今も月に描かれている。だから月には彼女の姿があるのだ。シベ
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