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人理を守れ、エミヤさん!
曙光、されど暗雲晴れず
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る優男だ。目元にびっしりと濃い隈がある。
 その窶れた顔を見ると、ゆっくり寝ていた俺が悪い奴に思えて、若干居たたまれない気分になった。ロマニはそれでも、しっかりした足取りでベッドの横まで来ると、眠るマシュに微笑みを落としてまずアルトリアらに言った。

「割り込むようで恐縮だけど、ちょっといいかな?」
「ええ、構いません。……貴方には返しきれない恩がある。邪魔はしない」

 ……? そのやり取りに、首を傾げる。
 アルトリアとロマニは、俺が寝ている時に何かあったのだろうか。意味深な会話に、しかし深い疑問は抱かない。ロマニが俺の横に立って困ったふうに語りかけてきたからだ。

「さて。調子はどうだい、士郎くん」
「悪くはないな。ただ左腕の鈍りが酷い」
「魔術回路が焼き切れる寸前だったからね、それは仕方ないよ。寧ろそれで済んだのは幸運と言える」

 脇に抱えていた鏡をロマニは俺に向けた。
 ……肌の色以外、赤い弓兵と瓜二つの顔。やはり鏡は見ていて愉快になれるものではない。
 今のロマニはどうやらお医者様のようだ。こちらの怪我の具合、完治まで要する時間、現在の容態を詳細に説明してくれる。
 その上で、彼は髪の色について触れた。

「士郎くんの髪から色素が抜けた件だけど……士郎くんは、原因は分かっているね?」
「自分のした事だ、把握はしている」
「ならいいんだ。後遺症は今のところ確認出来ていないけど……」

 一旦、ロマニは言葉を切る。その上で前置きをした。

「これは医療部門を預かる者としての言葉だ。そうと知っておいてほしい」
「ああ」
「士郎くん。……もう固有結界は使っちゃダメだ」
「……」

 真剣な目だ。疲労ゆえか遊びのない、直截な物言い。
 分かりきっていた事である。当たり前の事を、彼は言っていた。

「固有結界。魔術の世界の奥義。使えるのはスゴいよ、それは認める。けれどキミの体は能力の割に回路が少なすぎる。サーヴァントを複数運用する身ではかかる負担を処理し切れない。今後、下手をするとキミは再起不能に陥りかねない程だ」
「……」
「……で、言いにくいんだけど、今度はカルデアの司令官として言わせてもらう。キミの固有結界はとても有用だ。能力じゃなく、結界という特性がだ」

 矛盾した事を言っている。そうと弁えているからこそなのか、ロマニは気まずげに目を背けながら髪を掻いた。
 ロマニの言わんとしている事はわかる。いや寧ろ言われるまでもなく有用性など知っていた。

「……敵がどれ程多くても関係ない、狙った敵だけを結界に取り込んで、こちらが数の優位を確保したまま戦闘に入れる優位性、士郎くんなら言うまでもなく分かって貰えると思う」
「まあな」
「ボクも言いたくはないけど、言わないといけない
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