曙光、されど暗雲晴れず
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一瞬体を揺らしたオルタは、半眼で俺を睨んだ。ちょっとした冗談なのに……。
「起き抜けに冗談を言えるとは、どうやら思っていたよりも元気そうですね。結構な事です。今度私の霊基を再臨する為のプログラムに付き合って貰いましょう」
「ああ。お前達の強化は必須だからな。必ず付き合う。約束する。……ところで他の連中は?」
「ネロは新規マスターとして色々な手続き、現代の常識の詰め込み等、超特急で知識を植え込まれています。アタランテはランサーに付き合い、専ら種火集めとやらに集中しているようです」
そうか、と呟く。俺が寝ていても、カルデアは変わらず大忙しという訳だ。
働きすぎて誰かが倒れなきゃいいが。特に、あの臨時司令官殿とか。
今度機会があったらゆっくりと話したい。何かあの男は俺に対して遠慮がある。その垣根を取り払って普通に付き合いたかった。誰にも弱味を見せられない立場の者同士、言い合える事もあるはずだから。
安心しきっているのか、無防備なマシュのふやけた寝顔に目をやって、淡く微笑む。
あの時。真の力を発揮したマシュの想いは真っ直ぐに俺に届いた。恥ずかしいとか、照れ臭いとか、そういう余分な感情は無い。ただ嬉しかった。その心が心地よかった。白百合のような魂に向き合える事の喜びは、きっと何よりも得難いものだろう。
上体を起こして、右手を伸ばす。ほっぺたを指先でつつくと、少女は眉根を寄せて難しそうに唸った。その様に、アルトリアも微笑み、オルタすら相好を崩す。
「守られてばかり、というのも情けない話だ。俺も、まだまだ強くならないと、な」
「貴方ならきっと、まだまだ強くなれるでしょう。私が保証します」
そりゃ心強い、とオルタが相槌を打つのに俺は応じる。アルトリアも、遠いものを見る目で告げた。
「あの赤い外套の騎士の領域に、シロウは近づいて行くのでしょう。強くなるのは良い事ですがくれぐれも御自愛ください。シロウは今や、人理を守る最後の砦のメンバーなのですから」
アルトリアの碧い瞳は俺の頭部を見ている。なんだ? と思って髪の毛を一本抜いてみると、それは白く染まって――否、正確には元の色素が抜け落ちていた。
もしかして、真っ白? 問うと頷かれ、俺は暫し沈黙する。
宝具の投影を、短期間でこなし過ぎた弊害だろう。別に死ぬ訳ではないし、肌はまだ無事だから気にしないでおく。マシュとお揃いだ、なんて笑ってみると、アルトリアは呆れたふうに嘆息した。
緊張感も無くなると、まるでそのタイミングを見計らっていたかのように空気音がした。扉が横にスライドする。医務室に、新たな訪問者がやって来たのだ。
「やあ。目が覚めたようだね」
やって来たのは、ロマニ。医療部門のトップで、現カルデア・トップ。そして過労が最も嵩張
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