偽伝、無限の剣製 (中)
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のもどかしさも良く理解していた。
それでもアルトリアはマシュを行かせない。
途方もない激痛に、アルトリアは額に脂汗を浮かばせつつも、決して乱れる事なく静かな語調で告げる。
「マシュ、よく聞きなさい。今の貴女をシロウの許へ行かせる訳にはいきません」
「っ? な、何故ですか! 先輩はわたしを、自分の生命線だと仰ってくれました! わたしもお供しますって、言いました! なら、行かないと――わたしは、先輩のお役に立ちたいんです!」
『誰かの為に』ではない。そんな曖昧な想いではない。明確に慕うマスターの事を想ってマシュは言っている。それを否定する気はアルトリアにはなかった。
だが、
「私が貴女を行かせないのは、今のマシュでは足手まといにしかならないからです」
「ッ! ……それはっ、そうかも、しれませんけど……!」
あれを、と。ブリテンの騎士王が指し示した先には芳しくない状況が置かれてある。
樹槍の膨張甚だしく、急激に成長する樹林は固有結界を埋め尽くす勢いで広がり、暖かい赤土に夥しい量の泥の根を張り巡らし、晴れ渡る蒼穹の空に蓋をしようと暗いヘドロを撒き散らしている。
カルデアは局地的に抵抗しているだけといった有り様だ。
アタランテは身軽に駆け回り、一向に樹界に囚われる気配はない。しかし背負った大剣を活かす機会がない。ちまちまと射掛ける矢は悉く魔神に命中しているが、まるで効いた様子もなく、生え乱れる泥の樹林に矢の一本すら阻まれ通らなくなりつつある。
男の剣群は己やアタランテ、オルタ、ネロに迫る泥の津波を押し留めるのに全力を注がれている。オルタの卑王鉄槌、ネロの剣撃、どれも一定の威力を発揮しているが、全体を通して見ればまるで意味を成していなかった。
無限の剣は無尽の泥に押し流されつつある。こんな大局の戦い、押し切るには圧倒的な個の力か、それに類する大局の力が必須となるだろう。
それは、残念ながらここにはない。
アルトリアも、オルタも、その霊基は初期のそれ。幾分か嵩増しはされているが、そんなのは誤差の範囲。本格的に霊基を再臨せねば、とても大局の個とは成り得ない。
そして、無限の剣では世界の重みに抗し得ないだろう。剣を振るうだけのネロとオルタでも意味がなかった。狩人の技も世界を前には無為である。ここに、楯を持つだけの騎士を投入しても只管に無駄なのは自明である。
男は、アルトリアにとって妬ましいながら、マシュへ非常に肩入れしている。マシュは最期の最後で男に庇われるだろう。あの男は、そういう男だ。故に一個の戦闘単位としてのマシュをそのままにはしておけない。
本来は黙っておくべきなのだろう。その成長を見守るべきなのだろう。
だが優しく育てる時期は逸した。これよりアルトリアが為すの
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