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人理を守れ、エミヤさん!
偽伝、無限の剣製 (中)
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てが魔力の塊、汚染源の泥。一つ残さずマシュが叩き落とす、ネロの剣の神聖な火が蓄積する泥を焼き払う。裂帛の気合いを放ってアルトリアが接敵した。剣弾に丸裸にされた樹木の壁など、名にし負う騎士王には紙も同然。易々と突き破り黄金の聖剣が魔神の首を刎ね飛ばした。
 やった……? それを見た瞬間、マシュがぽつりと呟く。俺は叱咤した。

「離れろ! アルトリア、オルタ!」
「―――っ!?」

 咄嗟に飛び退いたが、退避が間に合ったのは機動力で微かにアルトリアに劣っていたが故に、接敵するのに一拍遅れていたオルタだけであった。
 首を無くしたにも関わらず、平然と駆動する泥の魔神。ヘドロの槍を振りかざし、地に突き立てた。



 すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)



 それは神祖の第一宝具、その真名解放。固有結界内の赤土からヘドロの芽が発芽し、無数の枝葉が退避しようとしていたアルトリアの左足に絡み付く。
 瞬く間に膨張するヘドロは、ローマそのものを汚し冒涜する邪悪なもの。ネロが怒号を発し丘に突き立っていた無名の剣を擲った。飛来したそれが、天高く持ち上げられ振り回されていたアルトリアを解放する。足に絡み付いていた触手を切断したのだ。
 着地すらままならぬ様子のアルトリア。虚空に投げ出された華奢な体躯を、思わず駆け出していた俺はなんとか受け止めた。鎧の重さのせいか、左腕が逝ってるためか、支えきれずもろともに転倒してしまう。
 ヘドロの濁流が怒濤の奔流となって迫る。倒れたまま、刃渡り十メートルにも及ぶ巨大な剣を十、投影し防壁とする。おぞましい波擣を数瞬押し留めるも、呑み込まれかけた刹那に内包した神秘を暴走させ、指向性を持った爆発を起こす。
 『壊れた幻想』である。爆風の中、腕の中のアルトリアに訊ねる。無事か? と。

「――すみません、シロウ。どうやら私はここまでのようです」
「……何?」

 淡く微笑んだアルトリアは、己の左足を指した。泥の触手に取られた足――そこからはヘドロの芽が萌芽し、徐々にアルトリアの体を侵食しつつあるではないか。
 目を剥き、一瞬、俺は言葉を無くす。最高ランクの対魔力を持つアルトリアを蝕むという事は、あれは聖杯の泥に比類する呪いという事だろう。つまり能力的には歯が立たないが、気合いで割りとなんとかなるという事である。聖杯の泥はそうだった。
 なんとかアルトリアを助け起こすと、手を伸ばしてその額にかかっているアルトリアの髪を掻き上げる。

「シロウ……? ……っ?」

 軽く、額に口づけする。顔を離すと、呆気に取られていたアルトリアに言った。

「もう充分だ。休んでいろ。いいな」

 情を一切込めず、淡々と言って聞かせ、俺はマシュの許に戻り再度剣群の投射に専心する。
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