第三節、不破不敗
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はない、あの『戦闘王アッティラ・ザ・フン』が握ったものが宝具となるのだ。
故に士郎に投影はできない。したとしても、なんの変哲もない長剣を剣製するだけに終わる。
三色の光の帯が、しなる鞭の如く振るわれ、七本の矢を薙ぎ払う。
己の対人宝具が更なる破壊の対軍宝具によって粉砕されたのだ。英雄なら、己の矜持とも言える宝具を破られたら怒りに震えるだろう。だが彼女は狩人。肌で感じる霊基の差から、何を見ても驚くような拙さを見せはしない。
宝具の解放直後の硬直を狙い、淡々と引き絞っていた矢を放つ。流星の如く虚空を駆けた矢は、女戦士の右肩を見事に射抜いた。
流石だな、とネロは満足げに頷く。だがアタランテの顔は晴れなかった。戦闘王は右肩に突き立った矢を――本来なら貫通させるつもりで放った矢を、こともなげに剣の柄頭でへし折り、まるで痛痒を覚えた様子もなくこちらを見据えた。
その傷口が、見る見る内に塞がっていく。有り余る魔力供給の恩恵かその治癒能力は常軌を逸していた。アタランテは言う。殺すなら一撃だな、と。心臓か、頭か。どちらかを吹き飛ばさねば止まるまい。
一度は顔を明るくしたネロも気を引き締める。士郎が言った。あれは戦闘王アッティラだ、と。真名の看破が異様に早いことに、しかし彼のチームは戸惑わない。彼の異能は、ここに辿り着くまでに話してあった。
士郎は冷徹な声音で言う。近づかれたら厄介だ、もう少し手の内を知りたい、アタランテと俺で弾幕を張るから近接組は観察に回れ。ネロ、戦闘は俺達が担当する、策を練るのは任せた。
うむ、任せよ。力強く頷くネロに頷きを返し、士郎はアタランテと並んで矢継ぎ早に剣弾と矢の雨をアッティラに射掛ける。
しなる剣を自在に操り、一本ずつと言わず、秒間三十本の矢と剣弾が射ち出されて来るのを破壊しつつ、着実に間合いを詰めてくるアッティラ。士郎とアタランテは交互に矢玉を放って互いの隙を無くしつつ、アッティラがどこにどのようなタイミングで攻撃を受けたら、どのような動きで反応し対処するのかの情報を暴き出していく。それは戦闘というより、獣狩りに似た工程だった。
併せて千本の矢と剣弾を凌がれ、間合いが残すところ百メートルとなった時、士郎は言った。剣技、体術の癖は大凡割り出せた。後は大技への対処のデータを取りたい。二射の間、最低二十メートルの接近に留められるか?
その問いに、アタランテは首肯した。汝の手並み、見届けよう。暫らくは任せるがいい。
皇帝特権により軍略スキルを獲得したネロが指示を発する。宝具『訴状の矢文』で足止めせよ!
――士郎は手を後ろに回し、矢筒に差していた螺旋剣を抜き取る。十秒をかけてたっぷりと魔力を充填、臨界に達した剣弾を黒弓につがえ形質を変化させて矢と
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