第一節、その体は
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犯して彼らと接触した時。男はネロ・クラウディウスを取るに足りぬ存在と決めつけ、全く観察していなかった。新たに増えていたサーヴァントも、衛宮士郎のものだろうと考えていたのだ。それが、誤りだったと?
少し注意すれば、すぐに気づけただろう。男の目は節穴ではない。カルデアの始末に失敗するに飽きたらず、第二特異点のサーヴァントすら御せず野放しにしていた無能のレフ・ライノールとは違う。油断も、慢心も、遊びもなかった。
なのに何故、男はネロ・クラウディウスの存在が変容していることに気づけなかったのか。
――なあ、おい。お前もレフと同じで、人間が変身した奴なのか?
脳裏に過るのは、人理焼却に抗う愚か者の声。自らに問いかけてきた不敵な顔。
――だとしたらなぜ人類史の焼却なんて馬鹿げたことに荷担する? 愚かに過ぎる、傲慢に過ぎる。人の歴史を途絶えさせようとするばかりか、なかったことにしようとするとは。増上慢も甚だしい、そうは思わないのか?
――神にでもなったつもりか? それとも、人を粛清することに大義でも見い出したのかな? いや人の未来に絶望したアトラスの錬金術師の可能性もあるか……。
――だとしたら更に度し難い。己の手前勝手な絶望に人類全てを巻き込もうとするなど餓鬼にも劣る。ああ、流石にそれはないか。人類を滅ぼそうとするほどの悪党が、そんなちっちゃい輩なわけがない。だとすると他に考えられるのは……誰かに唆された道化かな。
「……そうか。貴様か」
不覚だった。あんな、安い挑発に気が昂った己の未熟。あの時、男は衛宮士郎を憎んだ。あの男に反論しようとしてしまった。
その隙を突かれ聖剣に薙ぎ払われたのだ。ネロ・クラウディウスなど眼中にもなかったのが災いしたことになる。
男は己の不明を認めた。そしてロムルスがなんらかの手をカルデアに加えた以上、第二特異点が修復される可能性が出てきたことを認めざるを得なかった。
その可能性を計算する。彼らの勝利に至る確率を想定する。
確率は、一%かそこら。
到底、絶対的オーダーの組み込まれた聖杯に支配される神祖に勝利できるとは思えない。
しかし――
マスター化し戦力となったネロ帝と、ロムルスが与えたとおぼしき火の力。
そして、ほぼ瀕死となりながらも、シャドウサーヴァント数騎を討ち、性質の反転したカエサルを屠ってのけた光の御子。
一日と半日もの激戦の末。彼の英霊は灰色の愛馬に跨がり、朱槍を右手に持ってカエサルの『黄の死』に切り裂かれた傷を物ともせず、生き残ったローマ軍の追撃からギリギリの所で逃れている。黒い馬に跨がった巨漢が主人を逃がすため、シャドウサーヴァントを足止めしている姿も見えた。
「……万が一が、あるかも
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