灯せ、原初の火
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しもせず、ネロは素直に胸の裡を明かした。
それに微かに照れた男を、友として慈しみの目で見る。そしてネロは神祖に向き直った。
精一杯の敬意と謝意を露に、しかし毅然と告げる。
「誉れ高くも建国を成し遂げた王、神祖ロムルスよ。すまぬが、余は友を後悔させる訳にはいかぬ。一度はその思慮に傾いておきながら勝手ではあるが、どうか余が彼らと共に行くのを許してほしい」
「赦す。元より私は快なりとお前達の答えを受け入れている。代わりに、名乗れ我が愛し子よ」
それは、荘厳なる誰何であった。
厳かにネロは応じる。それに答えないわけにはいかないと、その魂が薔薇の皇帝に名乗り上げさせた。
「――余は、余こそはローマ帝国第五代皇帝であり、そしてカルデアのマスターである。ネロ・クラウディウス、永久なるローマのため、この身を人理修復の戦いに投じる覚悟がある!」
「……うむ。愛し子よ。私はその目と声を聞きたかった。ならば、躊躇うことはない。ローマは世界である。故に、世界は永遠でなくてはならぬ。私はそなたらに賭けよう。そなたらこそが、魔術王ソロモンの企みを打ち砕くものと信仰する」
『ソロモンだって……!?』
不意に出た名に、ロマニの驚愕に染まった反駁が返る。
それには答えず、ロムルスはネロの手にある隕鉄の赤い剣に手を翳した。
そのらしくない性急さは、もはや一刻の猶予もないことをこちらに教えている。
だがロムルスの余裕はなくならない。雄大な愛と慈しみの眼差しで、ロムルスは『皇帝特権』を行使した。
「ネロ・クラウディウス。残滓である私に出来るのはお前の裡にあるローマをカタチとし、皇帝足る特権を――サーヴァントのスキルを生者であるお前に与えることだ」
「これは――」
ネロに与えられたのは、皇帝特権のスキル。生身であるが故に、サーヴァントのクラス別スキルも、サーヴァントとしてのスキルも持たず、才あるとはいえ剣士としての力量は下の下だったネロに戦う力を与えるものだった。
他者に、スキルを与えるその規格外の特権は、真実EXランクの皇帝特権。
影の国の女王が持つ魔境の叡知が、女王の認めた英雄にのみスキルを与えることが出来るのと同じ。ロムルスはネロを英雄と、皇帝と認めたのである。
「……友よ。すまぬが、私に余分な力はない。既に完成しているその身に、私が与えるものはない」
「端から求めていない。ただまあ……また機会があれば頼む。あって困るものではないからな」
「ふ……強かであるな。そして、だからこそ託そうとも。ローマの命運を。そなたらの戦いが世界を永久のものにすると私は固く信ずる」
その体が幻のように薄まり、消えてい
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