全て、全て、全ての言葉はローマに通ずる
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として機能する私が光の御子に注力することはない。……分かるか? これより先、私は樹槍の力を最大限に駆使しそなたらの侵攻を阻むことになろう。そなたらが蹴散らしてきた一割のローマの津波など、比較にもならぬ質量だ。仮に一度、二度凌げたとしてそれ以降が続くと思うか?」
「……それは、無理だな」
士郎は苦々しく、素直に答える。
ここまで来るのに見てきた枝葉の津波が、たったの一割程度……? それが、残りの九割加算される?
……確かに何度かは凌げる。聖剣の火力は聖杯ごと神祖を打ち倒せるほどのものだ。
だが何度も使えるものではない。波状攻撃を仕掛けられれば、たちまちの内に魔力切れとなり、あっさりと呑み込まれるだろう。聖杯のある帝都ローマに辿り着くことすら出来ない。
「……だが退いてなんになる? 一旦カルデアに戻って、帝都ローマにレイシフトし直す……無理だ。魔力が渦巻き、特異点の中心地と化した場所に直接乗り込むのは、現段階で不可能になっている。そうだろう? ロマニ」
『……ああ。その通りだ。今現在の帝都は、もう観測すら出来ない状態になっている。そこにレイシフトを試みたら、意味消失は免れない』
「そうか。だが、その魔力の渦を一時、解除する手段があるとすれば――どうだ?」
「なに?」
そんな手段があるというのか。思わず反駁した士郎に、ロムルスはそれを口にする。
空気が凍ることを、言った。
「我が子ネロを差し出せとはそういうことだ。
ネロを取り込めば、ローマは滅び、特異点は完結する。だが、一瞬のみ、ほんの短時間のみなら、人理焼失を食い止めることが出来よう。役目を果たした聖杯を私が掌握し、ほんの一時のみ猶予を作れるのだ。
なれば、そなたらは直接帝都に乗り込み、聖杯を持つ私に挑む機会を得られよう。戦いは避けられないが、そうすることで初めて勝機を見い出せる」
その言葉に。
士郎は沈黙し目を伏せた。
苦しく、痛く、重い沈黙。ネロは意を決したようにロムルスの許に歩み寄ろうとし、咄嗟にアタランテがそれを止めた。
「マスター! 惑わされるな、敵の言を鵜呑みにしてどうする!」
「そうは言うがな、アタランテ。余にはどうにも、他に策があるとは思えぬ。ならば神祖の申し出を受けることこそが、ローマ皇帝として、カルデアのマスターとして執るべき方策ではないか?」
「そんなことはない! 私はマスターを見殺しにはできない!」
「そうか。短き関係ではあったがそなたの忠義、嬉しく思う。――令呪を以て命じる。余を止めるな、麗しのアタランテよ」
「マスター!!」
絶対命令権を行使され、アタランテの手は離された。
ネ
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