全て、全て、全ての言葉はローマに通ずる
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ありがとう、と言って受け取り、一本をロムルスに手渡す。彼は古代人には度の高すぎる葡萄酒にも面食らった様子もなく、いたって平然として舌鼓を打っていた。
「美味であるな。これはそなたの手製の物か」
「ああ。度数は平気なのか?」
「大事ない。ローマの知る中でも美酒の部類ではあるが、ローマの秘蔵する神酒には一手及ばぬ」
「……なんだと?」
「ふむ、矜持を傷つけてしまったか。だが、案ずることはない。そなたの腕は確かだ。問題は材料にある。神代の物と、そなたの時代の物では、同一の製法を用いても味わいに差が出てもおかしくはない。寧ろ神代を終えた未来でこれだけの物を手掛けられた己の腕を誇るがよい」
「……上があると知りながら、今に甘んじて向上することを諦められはしない。答えろローマ、じゃない神祖。その神酒の材料はなんだ」
「し、シェロ? なんの話をしておる? 今はそれどころでは――」
「だまらっしゃい!!」
ネロが何やら言いかけてきたが、士郎はそれを掻き消すように怒声を発した。
びくっ、と肩を揺らし、困惑しながらネロはマシュを見た。マシュは、重苦しい表情で、左右に首を振る。こうなった先輩は止められません、と早くも諦めモードだった。
アタランテは嘆息して呆れていて。アルトリアとオルタは我関せずと豚を平らげることに夢中だった。しかし、まあ、いざとなったら即応できそうなのは、流石に騎士王ではあるが……。
ネロは孤立無援であることを悟る。ここは空気を読んで、暫しマスターの先達と、偉大な神祖のやり取りを黙って聞いておくことにした。酔いの入った輩ほど面倒な手合いもいないからだ。
やがて、神祖と酒について激論を戦わせ始めた士郎だったが、納得のいく答えを得られたのだろう。神祖に深々と頭を下げ、情報提供に感謝していた。
「神祖の博学ぶりには感嘆の念を禁じ得ない。よもや竜種の逆鱗と爪、デーモンの心臓と脊髄にそんな味が隠されているとは……」
「キメラの爪と、鳳凰の羽根、呪いを帯びた凶骨もよい養分となる。隠し味としては、ローマは虚影の塵が好ましい」
「!! では世界樹の種はどうだ? あれは食ってみたら活力が沸いてきた。気力も充実するから鬱を一発で解消させることも出来るはずだ」
「ほう、興味深い……鋭い見識であるな。なるほど、ローマである。ではローマも秘めたる知恵を開陳するとしよう。土の精霊の宿った根である聖霊根、そして二角獣の頭毛の中に隠れている小さな角が、神酒をより高みへと導く標となるのだ」
「なんだって……クソォ! 逆鱗と竜とキメラの爪、デーモンの心臓、竜牙兵の特に強い呪いを宿した骨しか持っていない……!! 畜生、こんな無念が他にあるか……!?」
「悔やむな。これから先、手に入れる機会
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ