MR編
百五十八話 死者を守る者
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っか……」
短く言葉を交わす。リョウはサチの方を見なかったが。それでも彼女の声が少し嬉しそうなのは分かった。何となく穏やかな空気が流れていたが、当然、この場所ではそれは長続きはしない。部屋の空気感の変化に、最も早く気が付いたのはキリトとリョウだ。
「さぁて……んじゃまぁ、感動の再開は此処までらしいぜ」
「あぁ、みたいだなっ」
「ッ、皆さん、来ます!」
二人に続いて、メンバー全員が一斉に武器を抜き放つ。リョウ達がくぐってきた扉の向こうから流れ込んでくる黒い瘴気が、部屋の中で唯一扉の最後の壁に向けて集中する。瘴気が集まるその先には、一体の巨大な石像が安置されているのが見えた。
瘴気が集まるほどに、その石像は表面の質感を石のそれから生き物の物へと変質させていく。チョコレート色の肌に、漆黒の犬の頭の乗ったその体躯は身長にしておよそ2m超と言った所か、リョウよりも頭二つ分程高い背丈のその姿は正しく、エジプトの神話に登場する冥界の神。アヌビス神に酷似していた。
[Anubis The King's Gravekeeper]
「王の墓守アヌビス、って所か?」
「あれ?アヌビス神って墓守だったっけ?」
「死後の安らぎを守るとかだった気がすっけどな」
「あの、集中してください!」
シリカが困ったように言ったが、無論、前衛のメンバーは既に前に出始めている。アイリとリョウ、その後方にユウキとキリトが付き、シリカは後衛と前衛の間に立つ、フォーメーションが取れた頃合いに、アヌビスは空間に瘴気を集めて作りだした細身の三叉槍を持ち、高速で振り回したかと思うと、切先を真っ直ぐに彼らへと向ける……途端、その周囲に薄暗い紫色の魔法陣が生まれ、その魔法陣から、次々にミイラやスケルトン、ドラウグルと言ったMob達を登場させた。それ自体は普通の演出と言える範囲だろうが、しかし……
「取り巻き……だけど」
「おいおいこいつぁ……」
「げぇ……」
「うわ、いっぱいいる」
前衛の四人が、それぞれげんなりとした顔をして、しかし戦う前から気勢で負ける訳にも行かないとばかりに顔を引き締め直す。今回の其れは、普通のボス戦で登場する取り巻きのモンスター達と比較しても明らかに、その数が多かった、各種類のモンスターがそれぞれ三、四体ずつ、それらが更に五種類は居るので、生み出されたMobの数や実に十数体。数の上での有利が一瞬で覆された当たり、つくづく1パーティのみでの攻略条件が辛いダンジョンだ。このダンジョンのアイデアを出した製作者は絶対に人を苦しめるが好きなタイプのサドに違いないとリョウが考えた頃合いで、Mob達が一斉に武器を抜いた、と同時にシリカが叫ぶ。
「え、えぇっと、戦闘、開始です!!」
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クエスト、『王墓の死霊』のボ
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