真紅の神祖
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んで火を強くしてから、吊るしていた豚をこんがりと焼き上げ始めた。
暫くすると、香ばしい薫りが辺りに充満し始め、幻想種の獣が釣られてきたとロマニから通信が入る。
アルトリアとオルタに目配せし、三十分後には戻ってこいよ、と言うと二人は猛然と駆け出した。飢えた獣は、それ以上に飢えた二頭の獅子に狩られてしまうのだろう。ご愁傷さまである。
豚を吊るす火の前に陣取り、豚の体を回しながら満遍なく火が通るようにしておく。少し包丁を通すと香辛料の風味と、肉の香ばしい薫りが混ざり合い、なんとも腹を刺激する匂いが漂った。
ごくり、と誰かが生唾を飲み込む。
肉汁が滴り始める直前、薄く肉を削いで口に運ぶ。その焼き加減を吟味して、マシュにあと十分ゆっくり回しながら全身を焼けと伝え、その場を離れる。慌てて後を引き継いだマシュから目を離し、今度は内臓を使って串焼きを作り始める。
この頃になると、早くも獣の殲滅を終えたらしいアルトリアとオルタが帰還し、まだかまだかと勝手に皿とナイフとフォークを人数分用意し始めた。
苦笑し、ネロとアタランテを手招きし、豚モツの串焼きの調理手順を教授して、一本作ると後はネロ達に任せた。
素人にやらせてよいのか!? と戸惑ったように言うネロだったが、アタランテという狩人が共にいるなら任せてもいいと答えておく。実際アタランテほどの狩人が、狩った獲物を解体し料理したことがないはずもなく、手本さえあれば問題なくやれていた。
俺は武器庫に向かい、ごそごそと物色して、隠していた葡萄酒を取り出した。
またか、と呆れた視線を受けたが、気にしない。酒なくしては人生の半分は損している。というか俺から酒を取ったら何が残るというのか。
肉汁がぽつぽつと火元に落ち、じゅ、じゅ、と音を鳴らし始めると、マシュと変わって火を消した。
吊るした豚の肉を薄く削ぎ、アルトリアがさっと差し出してきた皿によそい、ナイフで切り分け、食べてみる。
うん、上等。呟きながら葡萄酒の瓶を呷り、旨い、と口の中で溢した。
シロウ! 物欲しそうなアルトリアにデコピンし、怯んだサーヴァントを放置する。
腹を切り分け、中から野菜に包まれた米を取り出して、それをアタランテの皿によそい、手渡す。彼女は猪が苦手らしいので、たっぷりと肉汁と香辛料の染み込んだ米と野菜を食べて貰うことにしたのだ。
恐る恐る一口食べ、旨いと囁くように言い、その仏頂面に笑みが浮かんだのを見て、俺は微笑して皆に言う。各自、勝手に肉を切って、勝手に食い始めていい、と。
アルトリアとオルタ、双方があっという間に肉を切り取り、米と野菜を取って、いただきますとお行儀よく挨拶して食べ始める。
その様から、食の好みが正反対のはずの二人が満足できているようで、俺はひとまず安心
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