戦場の王、大国の王
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年が席について肉料理を食べ始めるのを見守った。
そして、自分のために用意された――犬の肉料理をみる。少年が食べ終わるのを見計らって、躊躇わず肉を摘まみ一気に咀嚼し飲み干した。
途端、左手から力が抜ける。ゲッシュを破らされ、呪いが働いたのだ。左手に握っていた赤い盾が地に落ち消え去る。クー・フーリンは苦笑して、怯えていた少年の頭を握り、軽く揺さぶる。あっさり気絶した少年を担ぎ、戦車に戻って少年を確保。
左半身が麻痺している。久しい感覚だ。腕と、耳が死に、目も見えない。右半身は無事で、幸い左足は生きているので踏ん張りは利きそうだ。
――やってくれるぜ、あのデブ野郎……。
苦笑し。
激怒する。
「殺す」
クー・フーリンは躊躇う素振りもなく右の耳を潰した。これで無粋な誘いの声は聞こえない。
更に戦いの狂気を呼び起こし、意図的に狂熱に浸って目に映る全てを敵と認識する。
クー・フーリンはロイグに言った。加減は無しだ、全力でいくと。本気の中の全力。あの野郎は確実に殺す。
こともあろうに、騎士としての初陣で……こんな醜態を曝させられるとは屈辱の極みだった。
クー・フーリンは吠える。精霊が怯え、混乱に落ちて狂騒を齎す。ローマの地は、クー・フーリンの赫怒に染まった。
敵兵の士気が目に見えて落ちた。恐慌に陥った。カエサルによって冷静を取り戻したが、それでもクー・フーリンへの畏れが消えたわけではない。
死の槍を掲げ、光の御子が。
戦場の王とまで讃えられた勇者が。
今、溢れ出る殺意と共に、大国の王に決戦を挑む。
「――『轢き潰す死棘の蹄』ッッッ!!!」
開戦の号砲。それは、死の戦車の本領発揮であった。
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