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人理を守れ、エミヤさん!
戦場の王、大国の王
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以下の存在に成り下がることにはならないか?
 コノートの側についたフェルグスは別にいい。フェルグスは元々アルスターの王だったが、コンホヴォルの母に王位を掠め取られた過去を持つ。コンホヴォルに従う道理はないのに、彼からの背信があるまで騎士団の若頭として武勇を振るっていたのだから、充分以上に義理は果たしていた。
 だが、自分はそうでない。ただ、それだけの理由でクー・フーリンはアルスターの為に戦ったのである。
 
 生前は、主に恵まれなかった。

 生前に、まともな王はいなかった。

 座にある膨大な記録の中で、覚えている限り、唯一まともだったのは冬木の本来の女マスターだけ。これも、やはり縁はなかったのか、一度も肩を並べて戦う機会はなかった。

 だが――どうだ? この、人類史に纏わる大戦で、遂に己は望みうる中で最高のマスターを得られたではないか。
 いい戦いといい獲物、加えていい主人がいたら番犬は満足である。その全ての条件を満たしてくれたのは今生のマスターだけであった。
 気骨があり、人の使い方に長け、知略に秀でる。死する場を心得、博打を知り、死地に自ら飛び込む胆力を備える。――最高の戦いと、最高の獲物を同時に揃え、己の命運を躊躇いなくこちらに委ねてくる信頼もあった。

 なら……これに応えずして何が英雄か!

 男――クー・フーリンは高鳴る鼓動にうっかり最終宝具(へんしん)しかけてしまったが、御者のロイグが一睨みをくれると我に返り、わりぃ、と謝った。
 そうだ。所構わず暴れるなんてつまらない真似はできない。なんたってオレは、騎士として仕えるという誓いを立てたんだからな、と自重する。
 今の己は生前の狂戦士ではいられない。理性と業と忠誠を持って戦う槍兵なのだ。戦いの狂気すらも御して、全霊を振り絞り戦いに徹するのみ。

 ――そうだろ? ロイグ。

 語りかけるも、手綱を握り、戦車を操るロイグは何も答えない。戦車の一部として宝具化し、自我が稀薄になっているとはいえ、元々が寡黙な男だった。
 照れ臭いが、親友、と言える数少ない男である。自我が稀薄でも、彼が何を思い、何を感じているのか、手に取るように感じ取ることができた。
 口数が少ないくせに、たまに喋ったらと思うとやけに辛辣な性質である。ロイグはきっと、「大した頭でもなかろう。御託を並べる暇があるなら、黙って槍でも振るっていろ」とでも言うに違いなかった。
 声を出して笑い、クー・フーリンはロイグに言う。

 ――まったくだ。そろそろ奴さんも本気で来るだろうし、オレらも本気出していくかね。

 世界(ローマ)を相手に戦え、なんて馬鹿げた命令を受けた。それを快しと受諾した。
 今、己はどこを駆けているのか。指令を受け戦いをはじめて既に二日が経っている。乱立
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