魔の柱、森の如くに
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――爆ぜよ風王結界、『風王鉄槌』!
――暴竜の息吹よ、『卑王鉄槌』!
バイクから降りるなり風の鞘を解き、アルトリアが打ち出した暴風の槌は樹木の津波を遮る。オルタの黒い旭光は障害を砕いた。微塵の如くに破壊された木片がぱらぱらと地に落ちる。
人面の樹木は血を流さなかった。樹液のようなものが夜の闇の中に四散しただけ。苦悶の顔のまま果てたそれを目に焼き付けながら、ネロが呟いた声は暴風の音に掻き消された。
ただ、士郎は黙って頷いた。その目は第二波となる樹海の振動を睨み据え、アルトリアらに同様の攻撃をするように指示を出した。
「……アサシン。このままじゃキリがない。どこかに樹海を発生させる基点のようなものがあるはずだ。それを探し出して破壊しろ。困難なら俺に言ってくれ」
(了解)
気配なく、されどレイラインを通して確かな応答があった。
こういった単純な質量を前にアサシンは無力である。故に別の用途に投入したに過ぎないが、戦果は期待薄だろう。
「……アタランテ、余からも頼む。樹海発生の基点を探し出してくれぬか」
「承知した」
ネロの命に応じるや否や、アタランテが駆け、跳んだ。蠢く大樹や枝葉の妨害をするするとすり抜けていき、あっという間に姿が見えなくなる。
……神代の狩人というのは、ああいったことが普通にできるのか?
身軽と言うより、羽が生えているとでも言った方が適切な跳躍力だ。士郎は呆れるやら感心するやら、見えなくなったアタランテから意識を切り、武器庫から黒弓と螺旋の剣弾を抜き取る。
障害物の多い中で、通常の剣弾は用を為さない。貫通力に秀でた投影宝具を選ぶのは当然である。
しかし、第二波以降、大樹の津波は収まった。
「……なんだ?」
不気味な静寂。士郎は突然収まった攻勢に眉を顰めて周囲への警戒を緩めなかった。
アルトリアを見る。首を左右に振った。
警戒を維持したまま無言でバイクに乗るように促す。士郎は顔を青くしていたマシュの背中をそっと押し、黒いバイクに乗るように言った。
……人面大樹とはいえ、元々が人間だ。それが破壊された光景を見て気分が悪くなったのだろう。敢えて優しい言葉はかけない。いつかは人を相手にしなければならない時が来るかもしれない。
マシュに、人の死に慣れろと言いたいのではない。ただ、そういった場面に直面する時が来ることを伝えねばならなかった。いや、言葉では言っていても、実感はなかっただろう。それが今、無惨な人の死を見て吐きそうになっている。
バイクに乗り、移動を開始する。念話で切嗣に移動を再開したことを伝えた。応答が返ってくる。
一時間余りも走っただろうか。代わり映えのしない景色に心が膿み始
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