麗しの女狩人
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俺はふと、首を刺す違和感に目を細めた。
昔から世界の異常には敏感だった。だから気づけたのだろう。
「――マスター。見られている。気をつけろ」
「……うむ。気を付けよう」
俺が何かを言う前に、アタランテがそう言った。
少し驚いた。この狩人も、自分と同じで世界の異変に敏感なのだろうか。
「アタランテ。なぜ気づいた?」
「私は森で生きてきた。森で生きるものは、生き物の視線に敏感でなければ生き残れない」
それだけ言って、アタランテは弓を構えた。
なるほどな、と俺はうなずく。神代の英雄は、やはり俺の理解を超える。
しかしローマ全土を覆う森に入っただけで敵に察知されるということは、先行したクー・フーリンもとっくの昔に発見されているということだ。クー・フーリンに四時間遅れてガリアに来たが、彼は今何処に……
ん? と。
目を凝らして、近くに見えてきたガリアの城壁を凝視する。森化している大地に呑まれているためか、見晴らしが悪くすぐには分からなかったが……。
ガリアの城壁は、完全に崩壊していた。
まるで、とんでもない怪物に襲われた後、みたいな光景である。
ガリアの城に入ると、そこに人影はない。ただ破壊されているだけだ。
――人はいないと見て、ただ破壊だけして先に行ったのか……ランサー。
呆れたパワーファイトだが、確かにこれはド派手である。すぐに脅威のほどは知れるだろう。
無視できない怪物の襲来――どう出ても構わない、手当たり次第に総当たり、といった方針か。
ありがたいことに、ついでに露払いもしてくれている。岩のゴーレムの残骸が無数に散らばっている。
クー・フーリンの働きは、現時点で目を瞠るほどだ。
だが……。
流石に、一筋縄ではいかないらしい。
前方より津波となって押し寄せる大樹の質量を見て。
否。大樹に取り込まれたローマの民、その人面の浮かぶ大樹の枝を見て。
俺は、ネロは、神祖の変質が致命的なものになっていることを知った。
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