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人理を守れ、エミヤさん!
全滅の詩、語れ薔薇の皇帝
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能だ。分かるな、二人とも。ネロ帝は絶対に死なせるわけにはいかない、彼女の死は俺達の敗北を意味する」

 鉄を噛むような心地で言い切り、俺はマシュを見る。
 マシュは、パッと顔を輝かせた。

「繋がりました! カルデアとの通信が復活しました!」
『ああっ! やっと繋がった! マシュ、士郎くん! 無事かい!?』
「ロマニ!」

 俺は食いつくようにして怒号を発する。気を呑むように激しく、反論を許さぬように。

「大至急、手配してほしいことがある。頼めるか?!」
『えっ?! あ、ああ! なんでも言ってくれ! 出来ることならなんでもする!』
「よし、なら技術部に言え、聖杯の解析は後回しだ、すぐに使うように指示しろ!」
『ちょ、ええっ?!』

 ロマニが驚愕したように声を張り上げた。そんなむちゃくちゃな! 何があるかわからないのに、そんなことはさせられない! と。それは道理だ。
 だが、

「四の五の言ってる場合じゃないんだよ!!」

 血を吐くように怒号する。そして今、俺達の置かれた状況を教え、何がなんでもネロを死なせるわけにはいかないことを伝える。
 そのために、聖杯を使わねばならない。
 ネロを蝕んでいる聖杯を使った呪いに立ち向かうには、同じく聖杯を使うしかなく。これからの戦いを思えば、とてもじゃないがネロを単独で動かすわけにはいかない。
 故に、だ!

「ネロを聖杯で治療後、聖杯でネロをカルデアの職員だと世界に誤認させ、カルデアのマスターとして運用する!」
『はあっ!? そんな無茶な!』
「無茶でもやらなきゃ世界が滅ぶ! 特異点が修正されればネロ帝の不在もなかったことになって、カルデア職員のネロは残り続けるだろうさ!」
『それは!? それがどういうことかわかってるのか、士郎くん!!』

「わかってる! 悪魔でも鬼畜でもなんとでも呼べ! 俺個人の呼び名よりも、人理を守護する方がよっぽど大事だろうが!! ええ、違うか!?」

 違わない、違うはずがない、故に俺はロマニに頼むのだ。これからのために。

「ネロ帝をマスターに設定し、クー・フーリンをサーヴァントとして付ける! とりあえず、今は治療だけでいい。ネロ帝が起きたら説得する。俺達と共に戦ってくれと。身勝手にも、自分を捨ててくれと!」

 聖杯で、カルデアのマスターを一人増やす。
 悪魔的な発想だった。最低の、外道の考えだった。

 だが、これ以上ない効果を望める起死回生に繋がる策でもあった。

 ネロ帝は、恐らくこの悪魔の契約を結ぶだろう。
 例えカルデアに生身のネロが加わっても、人理が修復されるとネロは『いる』ものとして歴史は進む。世界の修正力とはそういうものだ。
 説得できなければ、諦める。無理強いしても意味がないから。
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