全滅の詩、語れ薔薇の皇帝
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いの緊張を緩めるのはこれで充分だ。
俺は肯定し、提案する。
「そうだ。現時点ではあくまで『自称』だがな。が、今の俺たちにとっては貴重な情報源に成り得るという点では、自称でも一向に構わない。話さえ聞けるならな。彼女を起こし、話をしようと思うが、どうだ?」
「……そうですね。では、起こしましょうか」
アルトリアがマシュを見る。どこか納得してない風な膨れ面のマシュだったが、この流れに逆らうだけの棘はなかったらしく、しっかりと頷いた。
まず、マシュに言って持ち物を調べさせる。また自害されそうになると、止めるのも面倒だ。
ボディチェックをしている光景から目を逸らし、何も持っていません、とマシュが報告してくるのを待って、俺は手足の拘束を解き猿轡を外すように言った。
そして、体を揺すり、マシュがネロ帝を起こす。
苦しげに呻き、華やかな美貌の皇帝は目を開いた。
「っ……!? な、なんだ貴様らは! 余をローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディウスと知っての狼藉か!」
「知らん」
跳ね起きるなり飛び退いて間合いを離し、鈴の鳴るような美声で誰何してきたネロ帝に、俺はばっさりと切り捨てた。
気色ばむネロ帝を尻目にザッと考えを纏める。
今、ネロ帝は起き抜けに見知らぬ者達に囲まれていて、些か動揺している。そして手元に護身のための武器がないことも身ぶりだけで確かめているのも見えた。
……手に武器がなく、見知らぬ者らに囲まれ冷静さをまだ取り戻せていない。この場合は、こちらがイニシアチブを握るのは容易だ。俺は彼女が何かを言う前に、さっさと名乗った。
「俺の名は衛宮士郎。こっちがアルトリアに、オルタとマシュだ。俺の仲間がボロ小屋の前で貴女が蹲っているのを見つけ、話し掛けようとしたところ、いきなり自裁しようとしたから無力化し一旦眠って貰った。俺達はローマの民ではないが貴女を狙う者でもない。その証拠として一切の危害を加えないことを誓う。……把握して貰えたか?」
「……」
長々と語り聞かせていると、ネロは注意深く俺、アルトリア、マシュ、オルタを順繰りに見渡し、やがて無理矢理にでも落ち着いたのか、皮肉げに苦笑した。
「……では、余は貴様らを敵と早とちりして自害しようとしたのだな」
「そうなる」
「……ふ、無様極まる。余ともあろう者が、敵意の有無すら見抜けぬとは。……手間をかけたな。詫びとして何かを取らせてやりたいが、生憎と財は全てローマに置いてきた。なにもくれてやることは出来ぬ」
「富は要らない。だが情報はほしい。何があったか、話してくれないか」
俺はローマのある方角――深紅の大樹が侵食する帝国を指差し、ネロに訊ねた。
俺の物言いは、本来不敬とも取れる。ネロはそれに不快感を示すだろうと思ってい
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